出版社内容情報
カント最晩年の、「自由」の「体系」をめぐる大著の新訳。第二部では「道徳性」を主題とする。「人間の人間に対する道徳的な関係」について、「同時に義務である目的」とは「自分の完全性」と「他人の幸福」であることを軸に論を展開していく。『人倫の形而上学』全体の充実した解説も付す。(全二冊)(解説=宮村悠介)
内容説明
カント最晩年の、「自由」の「体系」をめぐる大著の新訳。「第二部 徳論」では「道徳性」を主題とする。「人間の人間に対する道徳的な関係」について、「同時に義務である目的」とは「自分の完全性」と「他人の幸福」であることを軸に論を展開していく。『人倫の形而上学』全体についての充実した解説も付す。
目次
徳論への序論(徳論の概念の究明;同時に義務である目的の概念の究明;同時に義務である目的を考える根拠について ほか)
1 倫理学の原理論
2 倫理学の方法論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
42
それが哲学であると呼ばれる以上、人間を高揚させるものでなければならないと思う。そういう意味ではカントの著作は群を抜いているといえる。 人間は自らを目的を定立することができる唯一の動物である。また、人間は誰しもが尊敬を求めているのだから他人を尊敬するというのは義務なのである。 そして、人に親切にすることも義務である。人はみな困難な時は特に人の親切を必要とするからである。 それは利益や不利益から帰結するものではなく、自身の理性から帰結するものである。徳=義務とは理性に他ならないのだ。2025/01/11
かわうそ
40
人は人からの親切を受けるために親切にする。これは間違いだとカントは断言する。え?と思うかもしれない。そうではなくて、カントは人は誰しも困難な時は人の助けを必要とするのだから、当然に人を助けるべきであると、つまりは普遍的な法則への尊敬から当然生まれる帰結として、義務であると言うのだ。これがかの有名な定言命令なのである。定言命令はふたつの観点から明確化される。ひとつは神であり、神は傾向性に左右されないのであるから定言命令は必要ない。もうひとつは仮言命令であり、これは他者を手段化するものであり明確に義務に反する2025/07/21
袖崎いたる
4
存在感的にゴリゴリしたカントの著作。読んでみると、案外おもしろい。ある意味でまっとうなのだけど、ある意味では刺激的に感じる。そして驚いたことに、それなりに読めてしまう。これは訳のおかげだろうか? カント倫理学が義務論であるって話はかねがね聞き及んでいたが、たしかにそうみたいね。感心したのは義務論を語るなかにも徳論と倫理学とのニュアンスの違いが読めたこと。あまり知られていない気のする「準則」なる概念によって、「(道徳)法則」と差別化されているかたちに恣意-自由-倫理の系列が描かれており、これが楽しかったです2024/09/02
エヌ氏の部屋でノックの音が・・・
3
2024年 4月12日 発行2024/11/08