出版社内容情報
われ思う,故にわれあり,という言葉で有名なデカルトの『哲学原理』を講義したもの.幾何学的形式で叙述しつつ,各所にスピノザ自身の説をまじえている点に特色がある.デカルト哲学への簡潔な手引書として今日なお最高のものである.「形而上学的思想」は,後期スコラ哲学の学説をデカルト的観点から説明したものである.
内容説明
デカルトの『哲学原理』(1641年)について、スピノザ(1632‐77)自身の説を加えながら、幾何学的形成で叙述したもので、生前本名で刊行した唯一の書(1663年)。デカルト哲学への手引書として今日なお優れた価値をもつといわれる。付録として、後期スコラ哲学の学説をデカルト的観点から説明した『形而上学的思想』を併収。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
38
デカルトはまず、明晰判明な原理を探し求め、「考え、疑っている間は確実に私が存在するということ」を発見しました。しかし、この原理からでは、三角形の内角の和が2直角に等しいだとかという原理も「神や悪魔によってそう思わせられている」という側面までは否定できないわけです。つまり、「我思う故に我有り」という原理は私たちに私の存在以外の確実性を担保してはくれない。そのためにデカルトは神を持ち出す。もしも、完全である神が存在するとすれば我々の持つ幾何学的原理も確実であるということが理解されるからです。2023/09/06
またの名
17
ご執心の思想を忠実に幾何学的に解説してるうちにオリジナルと書き手が区別し難くなってしまう、哲学史上最も胸熱な自由間接話法(原作レイプ)の一つ。移動は相互的関係であるため、物体Aが移動するなら停止しているとされる物体BもAに対して移動するし、永遠と違って時間などある事物の限りある持続と別の事物のそれを比較する人間の頭の中にしかないと書くスピノザが、各方面から迫害されることになったのも納得の帰結。その論理は当然の如く、事物そのものは善でも悪でもなく他の事物との関係においてのみそう言われると結論してしまうから。2016/07/08
加納恭史
15
スピノザの「国家論」は読んだが、政治に深い関心がある。次に彼の一冊のこの本を読む。彼はデカルトにも深い関心があった。この本は確かにデカルトの哲学原理を読み解く。それでいてスピノザの哲学も折り込んでいるようだ。スピノザもデカルトから出発する。一切に対する懐疑がある。「我思うゆえに我あり」。いくら懐疑する我も否定することはできない。存在するすべてのものは、神の力のみによって維持される。(定理十二)。神はあらゆるものの創造者である。(系一)。この神はキリスト教の神ではないようだ。まるでインドの神ブラフマンだ。2023/06/08
karatte
12
自らの思想を伝える準備のため、若き弟子に口授筆記させたデカルト『哲学原理』の一部と形而上学的思想の要綱を、友人らの希望により大幅加筆の上出版したのが本書である。それ故他の著作に比べると軽視されがち。ドゥルーズによるスピノザの解説書『スピノザ』が双方の理解に大いに貢献しているように、本書だけでデカルト・スピノザを語るのは無理としても、思想体系の関連性はしっかり補完してくれる。早くは『短論文』に見られ、やがて『エチカ』に結実する幾何学的叙述にも磨きがかかり、フルスロットルではないけど暖気は充分といった感じ。2019/11/24
Ex libris 毒餃子
9
スピノザを読みたくなって積ん読崩し。デカルトとは思想的に反するところがあるが、仕事については評価しているのがわかる。また、ちょいちょいスピノザ自身の思想が透けて見え、デカルト⇄スピノザと思想を行き来できた。付録の方が難解で、有の存在とか言われてもわけわかめだった。beingのbeingnessってわけでもないようだし。2019/09/13