内容説明
オウィディウス、ラブレー、カラヴァッジョ、ゴヤ、ランボー、スティーヴンソン、ペソアなど、過去の巨匠が見たかもしれない夢を、現代作家タブッキ(一九四三‐二〇一二)が夢想し描く二十の短篇。夢と夢が呼び交わし、二重写しの不思議な映像を作りだす、幻想の極北。
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
212
タブッキが歴史上の人物たち20人の見た夢を描く掌編集。いずれも、いかにもという感じではある。ただし、読み手のこちら側にもそれ相応の知識がなければ、その分楽しみも薄くなる。したがって自分がよく知っている人物であればある程納得することになりそうだ。かくして、私の場合はダイダロス、ヴィヨン、カラヴァッジョ、ゴヤ、ロルカあたりが最も楽しめたという結果に。このあたりは読者それぞれに違っていそうだ。それにしても、岩波文庫も変わったものだと思う。今までは、ひたすらにシンプルな表紙を守ってきたのが、今はこれだもの。2013/10/19
ケイ
110
タブッキが愛する芸術家たち20人の夢を見て空想して書き連ねる。美しい余韻を残すのは、まずダイダロスの夢:太陽なら焼けてしまっても月なら飛んでいける。ラブレーの夢:修道士が自分の描いたパンダグリュエルと過ごす飽食の一夜。チェーホフの夢:私は何より人間の話が好きだから。詩人ペソアの夢:「どこまでお連れしたらいいんで?」「夢の終点まで」 終点まで見たいと思える夢なら、もう目は覚めなくていいのかもしれない。2023/01/08
青蓮
102
タイトルに惹かれて手に取りました。タブッキは初めて読みます。オウィディウス、ラブレー、カラヴァッジョ、ゴヤ、ランボー、スティーヴンソン、ペソア、フロイトなど、過去の巨匠が見たかもしれない夢をタブッキが夢想し描く20の短篇集。テーマが「夢」というだけあって、どの物語も幻想的で不思議な味わいがありました。巻末に「この書物のなかで夢を見る人びと」としてタブッキが取り上げた巨匠達を簡潔に紹介しているのも親切。これを併せて読むとまた書かれた作品の深い意味を感じ取ることが出来そうです。タブッキの他の作品も読んでみたい2017/07/22
コットン
77
20人の見たかもしれない夢を著者目線で語りかける幻想的ショートショート集であるがそこはタブッキ風に忘れ難い話が多い。自分的には人物像として「いかにもそうだよな!」と思えるカラバジョと、フロイトにとって自虐的なフロイト博士(タブッキってこんな感じでも書けるんだと予想外)が良かった。ちなみにフロイト博士はノーベル賞のノミネートは医学賞 が複数回ある。変わったところでは文学賞も1回ノミネートされているが意外と文学賞を受けていたらその後の文学賞の方向性も変わっていたかも?2021/09/13
藤月はな(灯れ松明の火)
65
タブッキが描く芸術家達の『夢十夜』。懐かしくも目覚めたら覚えていないかもしれない夢、後々の運命を暗示させる夢、自分の欲望を再現する夢、あまりも幻想味が強烈で現実こそが夢ではないかと思える夢。特に阿片の吸引によって超自然の詩を描いたコールリッジの夢は現実と地繋がりの白昼夢めいている。「あなたの夢は現実と逆の存在ではなく、むしろ、現実に作用している。つまり、あなたの夢は見た時点で存在が永遠となる」ということをそっと教えられるような作品です。2013/11/16
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