内容説明
演劇訓練の創造的システムの確立者、モスクワ芸術座の創設者として、近代演劇史に巨大な足跡を残すスタニスラフスキー(一八六三‐一九三八)。その自伝の、上巻は幼少年時代。革命前のモスクワの富裕な家庭で、オペラ、バレエ、サーカスに親しみ、家族で芝居に興じた幸福な自己形成を語る。
目次
俳優の幼年時代(強情;サーカス;人形芝居 ほか)
俳優の少年時代(アレクセーエフ・サークル―オペレッタ;競争者;空位時代―バレエ‐オペラ修業‐アマチュア趣味)
俳優の青年時代(モスクワ芸術・文学協会;最初のシーズン―外科手術;幸福な偶然―『ジョルジュ・ダンダン』 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
4
これは大当たり。もしかしたら今年一番かも。教養小説を地でいっている。「ヴィルヘルム・マイスター」そっくり。それでいて自伝なんだから。劇という芸術分野を極めるまでの作者の成長過程を一緒にたどることで芸術というものがもう一歩深く理解できるようになる。劇というものは今ではほとんど廃れたかにも思える分野ですが、これほどの奥深さがあるのだと驚かされます。文学をはじめとした多くの芸術を併せ持った劇という分野のおもしろさが伝わってきます。これが現代の映画などの分野に影響を及ぼしたのか?詳しくはブログで書きます2011/02/12
MILK
2
チェーホフ好きから興味が出て読みました。固そうな題名に構えてたのですが、意外な面白さ!俳優として自分の来し方を振り返っている本なので、上巻は自分の子ども時代から。この子ども時代の家族の描写がとても生き生きとしていて素晴らしい。父親がサーカスのチケットをもったいぶってポケットから出す(その前にあれ!失くした!など小芝居をする)シーンなど笑ってしまいました。俳優としての悩みを延々と語る辺りはやや読みにくいですが、ちょっと演劇を齧ったとか多少芝居に造詣のある人は興味深く読めるでしょう。2009/09/09
Urara
0
役者を演ってたり演ったことのある人には楽しめる本だけど、そうじゃない人にとってはどうなんだろう? それにしても、子供の頃の印象的な観劇体験はともかく、自分が演った芝居の一本一本について、こうまで詳細に思い出して書けるものなのか疑問。 私なんて年表すら難しい。 …や、年表こそが難しいのかな? 順を追って自分の芸術における生涯も思い出してみようか?2017/11/02
壱萬参仟縁
0
強情(18ページ~)、勉強(76ページ~)に注目する。「両親は、若いころにも、年老いてからも、相思相愛の仲」(23ページ)とは羨ましい限り。ふつう、離婚に至るカップルもいるからだ。「私の天性の強情は、舞台芸術家としての私の生涯に、ある程度まで、よくも悪くも作用してきた」(25ページ)という。評者が学位を貰えないことに通じると共感した。意外にも「記憶力の必要な役者として、私はこの損失を重大なものと考えるし、不快の感情をもって中学時代を思いおこす」(81ページ)と述懐される。子供時代と大人の職業は関連しない。2012/08/05
えっ
0
ブルガーコフ「劇場」のイワンワシーリエビチのモデルがどんな人か知りたくて読んでる。もっと高尚で冷たい人を想像していたが、なんか俗っぽいし気にしいだし努力家。本人の言う通りめちゃくちゃ強情なのがエピソードからも写真からも感じられる。この人がこれから色々あってイワンワシーリエビチ!というのが上巻で割とイメージできた。真面目な演劇論だったら読むのがしんどいかなと不安だったがおじいさんの昔語りだったので楽しい。2021/10/02