出版社内容情報
息子への愛だけを生きがいに,何事にもびくびくして無知と忍従の生活を送っていたニーロヴナ.しかし彼女は次第にめざめ,革命家へと成長してゆく.この主人公を軸とし,社会の重圧をはねのけて立ちあがる新しい群像を描いたこの作品は,ロシア革命前夜の苦悩をリアルにとらえるとともにその理想を今に伝え,なお人々の心を打つ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
393
上巻ではペラゲーヤは、次第に覚醒してゆくが、あくまでもパーヴェルの母であった。ここ下巻では小説の中でも自立を果たし、理論的な革命家に成長してゆく。すなわち「万人の幸福への道」を歩み始めるのである。もちろん、それは平坦なものではあり得ず、パーヴェル等の逮捕、裁判へと続く、革命の同志として、否それ以上に母としての苦難の中においてである。むしろ、そうした逆境から立ち上がることこそをゴーリキーは求めていた。なお、本書の理想がソ連の社会主義(スターリン以降の)と決定的な違いを見せるのは、インターナショナルであろう。2021/10/15
ヘラジカ
25
生物学としての母、革命のシンボルとしての母、キリスト教の概念としての母。「母」という存在が、産み出す者としてだけあるのではないということを如実に示した作品。読んでいてソクーロフの『マザー・サン』を思い出した。2017/03/02
あっきー
17
⭐3 終盤の息子の裁判での陳述が著者の主張で、ここは読む価値はあると思う、互いが正義を主張する権力闘争の論法にはまってしまうと手詰まりでもう出口がないという気が最近していて希望も失せるが、集団的な革命闘争の過程のなかで人間は新しく生まれかわる、その社会主義意識は成長することが描かれているところにこの小説の意義がある2023/10/16
KUMAGAI NAOCO
2
息子パーシャの二度の投獄、面談、(脱獄計画とその未遂)、そして裁判(といっても帝政ロシアが生み出した不平等社会による判決)といった状況になっても、息子と息子の周りに集まった人々を理解し、協力し、ついにはパーシャの母というだけでもイエスに対する生母マリアのごとく、革命運動の象徴になっていく。もはや一人の息子の母以上に、母としての崇高さを表しているのではなかろうかと。2016/03/17
ヨセフ
2
批判的リアリズム作品の鑑賞は実はこれが初めてである。この小説において最も注視すべき点は、「母」であるニーロヴナの思考の発展である。活動家になった息子の講釈を聴いても「そんなものなのかねぇ」と独白するのみであった母が、世界の真理を労働者の生活に即して対自的に考え始め、遂には階級意識に目覚めて自身の言葉で真理を大衆に語るまでに成長していく。ここに至り、表題の2重の意味が浮かび上がって来る。ニーロヴナは最早自分が苦しむ意味も解らぬままに死んでいく労働者家庭の母親であるだけでなく、階級全体の母親になったのである。2014/07/06
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