出版社内容情報
夫伯爵への貞潔と青年フランソワへの情熱との板ばさみに苦しむドルジェル夫人.彼女の感情の動きを中心に,人工的な感情の仮面をつけたさまざまな作中人物がそれと意識しないうちに弄する心のからくりによって,触れ合ったり離れたりする軌跡を,ラディゲ(一九〇三―二三)は硬質な文体で細密画のように描く.フランス心理小説の最高傑作.
内容説明
夫伯爵への貞潔と青年フランソワへの情熱との板ばさみに苦しむドルジェル夫人。彼女の感情の動きを中心に、人工的な感情の仮面をつけたさまざまな作中人物がそれと意識しないうちに弄する心のからくりによって、触れ合ったり離れたりする軌跡を、ラディゲは硬質な文体で細密画のように描いてゆく。フランス心理小説が生んだ最高傑作の一つ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miri
67
1924年のフランスで出版され、著者が20歳で夭逝したという背景を頭に入れ読み進めると、タイムスリップしたようにプラトニックな恋愛模様を眺めることができます。伯爵位を持つアンヌ、その妻マオ、友人フランソワ、主要人物三人の交流。所謂不倫なのですが、文体の妙かその貞淑さか、単なるロマンスとして感じられるのです。激しくも陰気でもなく、かと言って美化されているのでもなく、恋に困惑する心の動きが感じられました。2020/12/20
しんすけ
3
人間は自己の考えや感情を、時を隔てて気付く生物なのでないか。それが55年ぶりの再読を終えた時点の感慨だった。だが、再読なる表現は不正確だ。なぜなら15歳のぼくはラディゲが描く心理描写が理解できていなかったからだ。どうにか最後のページに辿りついたとき、19歳になれば理解できるのではないかと希望を抱いて本を閉じたものだ。しかし今振り返れば、30歳になっても理解できなかったであろうことは明らかである。ラディゲが冷めた目で見た通俗社会の心理の動きを肌で感じ取るようになったのは、40歳を過ぎたころからだったはずだ。2016/07/18
むぎ
3
友人の妻に恋をしてしまう青年のお話です。心理描写がとにかく分析的な小説です。登場人物それぞれの心理描写が緻密に為されていて、興味深い作品でした。序盤はなかなか進まなかったのですが、読み進めるうちに夢中になりました。結末は少々尻切れトンボで消化不良でしたが。2016/01/22
mayuko N
2
2作しかないラディゲの2作目。 今回の作品は、プラトニックな不倫が題材となっていた。 私がフランソワとは違うだろうと思うところは、小説の終わりの外にあるので真実は分からず比較もできないが、おそらくマオを手に入れようとしてしまうところなきがする。 不倫ではないので良い気もするが、そうした場合のひとつの結果を知っているものとしては学習が足りないのかもしれない。 ひとつひとつ形が違うもので、それぞれが私を形作っているので一概に悪いものであるとは思わないけれど、求めることはエゴとも思う。 2020/01/29
Soichiro
0
ふわっとした緊張感2013/06/21