出版社内容情報
第一次大戦のイタリア戦線.アメリカ人中尉ヘンリーは武器を捨て,恋人のイギリス人篤志看護婦バークレーと共に非情苛酷な戦場からスイスへと逃れるが,運命は彼らの愛の成就を許さなかった.物語は余分な修飾語を一切はぶき,歯切れのよい文体で展開し,読後,悲劇の秀作を観おわった如きさわやかなカタルシスを感じさせる.
内容説明
戦場を脱出、追跡を逃れて湖上を渡る恋人たち。だが、安住の地を求める彼らに対して運命は非情であった。作者はこの小説を現代の「ロメオとジュリエット」だと言ったというが、戦争と恋愛を主題としたこの小説ほど国境を越えて愛読されているものは稀であって、読後、悲劇の秀作を観おわったような、さわやかなカタルシスを感じさせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
esop
74
戦場を抜け出し、恋人のバークレイキャサリンと隣国へ。 武器とおさらばするも、心に引っ掛かりがある。 しばらく幸せな日々が続くも、最後はまさかの展開に。 ヘンリーが神に祈る場面は必死さが伝わる。 リズムテンポがよく話が進む。 世界大戦のバックグラウンドが分かっていないから、全部は飲み込めていない。 なんとも言えない読了感。 リナルディにまた会いたかったなぁ2025/06/15
イプシロン
30
戦争によって生みだされるものは何一つないというテーマを、赤子の死産と愛する人の死によって描き出しているのが見事。だがヘミングウェイ独特の文体ゆえにそれを感情で味わうのはなかなか難しいかもしれない。――「あなたはいのちを重く見なさるかな?」齢94歳のグレッフィ伯の問いかけこそ、この作品最大の問いかけだろう。それに対する主人公の回答が実に傲慢で、信心深さの無さを曝け出す場面は、この戯曲的小説のハイライトといえよう。信仰を持つとは自分の愛する者だけに目を向けることではなく、あらゆる生命に目を向ける道なのだから。2016/01/21
特盛
22
評価4/5。人生において何か幸せな時期が続くとする。こんなことはいつまでも続かない。いつ何時運命が残酷にもてあそぶか分かったもんじゃない。そんなことを考えてしまう。物語なら猶更だ。100%幸せなシーンになると、ページを繰るのが悲しくなってしまう。本作で中盤に描かれたスイスの山荘でのつかの間の日々は、まるで遠い美化された記憶の様。終わらないでくれ!でも運命、或いは偶然性は追いかけてくる。個人は縁を一方的に勝手には切れないのだ。火にくべた薪の上を歩く蟻や戦争でヘンリーが見たいくつかの死。そして物語の結末。2024/05/16
ペペ
6
上巻と同じく淡々と書かれており、上下巻通して戦争の無常さを読者に訴えかけてきた。2016/04/16
ぴーひゃらら
4
結局二人は戦争から逃げ切れてはいなかったのだろう。戦争は何かを生み出しもするが、同時にあらゆる点で人を不幸にする。2010/07/31
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- 和書
- アメリカ三つの顔