出版社内容情報
賭博場をさすらうベッキーとの予期せぬ再会.亡夫を追慕するアミーリアに旧友は15年前の手紙を突きつけ,迷妄を醒ましてやる.ああ,空(くう)の空―虚栄の人間絵巻も千秋楽.〈悪女〉最後の疑惑を読者に残して.新訳.(全4冊)
内容説明
賭博場をさすらうベッキーとの予期せぬ再会。亡夫を追慕するアミーリアに旧友は15年前の手紙を突きつけ迷妄を醒ましてやる。しかし、ああ、空の空―虚栄の社会はなおも続き…人間絵巻ついに完結。“悪女”最後の疑惑を読者にのこして。新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
189
最終巻は 再会の巻だった。 ナポレオン戦争後のアミーリアと ドビン少佐、そして レベッカ… 三人三様の人生がクロスして…最後は みんなが幸せになれるような気がする、 大河らしい終わり方だった。2018/05/10
ケイ
132
レベッカの最後の疑惑に通ずるものもあるが、振り込め詐欺だの、元手を奪う目的の投資への勧誘、果ては保険金殺人などは、他人の物を自分の物とすることをはばからない倫理観の決定的欠如である。そんなレベッカの1面に気付かないアミーリアは愚かだが、それ以外に彼女が責められるべきことはない。この人しかいないと思った男の形見が、その男そっくりの息子となれば可愛いいのは仕方ないのではないか。そして、最後の作者からの問い~誰が望むものを手に入れたのか? たくさんを望まなかった人であり、それはいつの世もそうであると思う。2017/10/26
NAO
56
亡くなった夫に貞節を尽くし続けていたアミーリアも、ベッキーに夫の情事の数々をばらされ、ようやく亡き夫の束縛から解放される。結局、彼女もまた、「夫には貞節でなくてはならない」という見栄に縛られていた虚栄の市の住民だったのだろう。自己本位でしかなかったのに、アミーリアを解放するという優しさを見せたりもする。そういう正体がつかめないところがベッキーの魅力なのだろうか。ナポレオンが登場と絡めて当時の虚飾にまみれた社交界を批判的に描いたこの作品は「もう一つの『戦争と平和』」と呼ばれている。2016/12/31
星落秋風五丈原
41
ロードン・クローリー中佐は、妻ベッキーとスタイン侯爵の仲を疑い決闘すると息巻くが、ほかならぬ侯爵のひきで、コヴェントリー島の新総督に決まる。その時、これまで長い間我慢してきたロードンの義姉でピット卿の妻レディ・ジェーンが、夫と息子をないがしろにした!とベッキーを怒り出入り禁止にして欲しいと頼む。一方オズボーン家に引き取られたジョージ―は、父親そっくりの尊大な性格に育つが、それもまた息子を偲ばせて可愛い!と大人気。セドリ夫人が亡くなり、ドビン少佐がエミーリアの兄ジョス・セドリを連れて帰国する。2023/12/15
ケイトKATE
33
『虚栄の市』を読み終わって、私はベッキーが悪女とは思えなかった。確かに自己中心的でずる賢く、嫌な所がたくさん見られる。しかし、自分をさらけ出して生きているベッキーが人間臭く親近感を抱いた。終盤に、ドビンが思いを寄せていることに気付かないアミーリアに対して、ベッキーが手紙を見せるシーンは本書のハイライトである。『虚栄の市』という小説は、多くの登場人物が虚栄心を持って共感できない人間ばかりである。それでも、サッカリーの皮肉と滑稽さを入り混ぜた語りが上手く、全4巻の大作を楽しく読むことができた。2025/07/07