出版社内容情報
スウィフトがその晩年に諷刺的鬱憤を爆発させたかの感ある痛烈な皮肉にみちた奇作である.召使頭,料理人,従僕,小間使,洗濯女,家庭教師など十数種の奉公人に対する処世訓が,実は「悪召使必携」ともいうべき逆説で貫かれ,召使の悪習と主人側の心理を徹底的にあばく.他に貧困処理について述べた一文を付す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
12
『ガリヴァー旅行記』を書いたスウィフトによる召使のためのガイドブック。同じような内容が続くため途中で飽きてくる。そんなときは巻末の「貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し~私案」を読み進めることをおすすめしたい。貧民の子どもたちの生活について書かれているのだが、かなりえげつない内容となっている。短い文章だが、これこそスウィフトの社会風刺の際の際となっており、読者はそうした問題があることを痛いほど認識させられる。彼の筆の運びはあまりに鋭く、読むものは血を流さずにはいられない。2014/06/02
壱萬参仟縁
11
旧字体。1745年スウィフト死後の遺稿(111頁解説)。召使の悪習悪癖。だらしなさ、じだらくさ、不正直、利己心、狡猾、不精さ、横柄さを微に入り細を穿って、暴き立てる(113頁)。金持邸では、買出の時、肉は値切って買う。勘定書を奥へ出す時は主人の名誉を傷つけぬよう、最高値段を書いておく(31頁)。オヌシ悪よのぅ。でも、多かれ少なかれ、大抵の人はそうやって効用最大化しているのだな。「うまい地位についている時は、この小車のてっぺんい居る時。過ぎ来(こ)しつらさを忘れてはならぬ」(52頁)。院生の頃が懐かしいよ。2014/01/31
Nemorální lid
4
『皮肉に裏から僕婢の悪習を発く形式の方が一層効果的で且面白いものが出来る』(解 p.111)と考えたスウィフトが極めて理知的な態度で冷淡に書き綴った教訓が当著であるが、『コップ類は小便で洗う』(p.22)、『蝋燭は息で吹消して、寝床の下へ押しこんでおく』(p.80)などと内容が余りにも諧謔的なものが多くを占めるのだ。しかし徹頭徹尾シニカル且つ論理的な書き方で、そこに微かな狂気をも感じる。アイルランドの貧困な子供たちを食肉用にしてしまおう、と言う付録の提案も大真面目に語っているので恐ろしささえ感じられる。2018/12/25
madhatter
4
再読。表題作…時々、役得等実益に関係なく、単に主人に嫌がらせしたいだけなんじゃねえかという内容があって笑う。それはともかく、程度の悪い使用人への諷刺なのは勿論だが、使用人の姿と同時に主人の姿も描かれる。そこには時折、ひどい扱いを受けても仕方ないだろという場合もあり、スウィフトの諷刺は一方向に限られていないのではと感じた。「貧家の子女…」…表題作よりも諷刺の毒は遥かに強く、根底にひそんだ精神は苛烈。ここまでの皮肉を言える問題意識を持った人間が、「頭から枯れて」いったのも、さもありなん。2012/05/27
viola
4
至るところで目にするこの本。うーーん、スウィフトだよねぇ、という痛烈(過ぎる)風刺たっぷりの家事使用人に対する心得。 そうそう、ワインは飲みたいなら飲んで、水を足せばいいし、赤ちゃん落っことしても死んじゃえば、ことは丸くおさまるよね★・・・・・・とか、凄まじいないようです。2010/02/09