出版社内容情報
チベット
内容説明
チベット、モンゴル、中央アジアで吟遊詩人により朗誦され、古来人々に親しまれてきた一大叙事詩。仏敵調伏のため神々の世界から人間界に転生したケサル王の英雄譚にして、チベットのはてしない天地を舞台に神々や悪鬼の化身である人間たちが繰り広げる、奇想天外でユーモア溢れるファンタジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
74
逆恨みによる仏の教えに仇なし、混沌を齎そうとする悪鬼から衆行を守ろうと生まれたケサル王の冒険譚。しかし、ケサル王が生まれるまでの過程でツッコミが止まらなくなりました。まず、天界のトェパ・ガワがケサル王として転生するように頼まれるのですが、転生するまでに付けた好条件が余りにも多すぎる!ゲームの主人公でも最初は貧弱な装備でも頑張ってレベルアップしていくのに、我儘かっ!そしてケサル王の母親となる龍神を選ぶのに龍神の住処に毒を流した挙句、脅しつける師の手段の選ばなさとトェパ・ガワへの贔屓ぶりに開いた口が塞がらぬ2021/05/09
syaori
70
チベットの英雄譚。物語は、仏陀の御教えを脅かす悪鬼たちを調伏するため神が人間界に転生した人物・ケサル王の勲しを巡って進みます。「炎の舌を持つ」巨人ルツェン王や悪鬼が跋扈するホル国のクルカル王など仏敵たちに対するケサル王の戦いは、侵入した王宮の台所に隠れたり、豪壮な隊商を出現させたり、雷で山と人々を灰塵に帰したりと、ユーモラスで夢幻的で凄惨でとても魅力的。それにツァンパにバター茶、チベット仏教に取込まれたブラフマー神や土着の神々などが色を添えていて、チベットの生活や信仰が垣間見えるような伝承を堪能しました。2023/06/01
優希
44
チベットの果てしない天地で繰り広げられるファンタジーと言っても良いでしょう。人々は皆、神や悪鬼の生まれ変わりとされているのが仏教と重なりますね。一大叙事詩と言っても良いと思います。2024/02/06
gibbelin
4
ジャファーめいた伯父さんトトゥンや、セチェン・ドゥクモ妃、なんで天界からわざわざ連れていったのかわからないくらいいいところがないですが、語りの場では、特にジャイアンとスネ夫とのび太の悪いところを集めたようなトトゥン伯父さんは子供たちに人気でしょうね。現代日本でもみんなお笑い芸人が大好きなように。2021/04/29
中海
2
チベット版「日本書紀」みたいな感じ?神様が仏教をないがしろにする勢力と戦う 話。日本版はまだ若い神様が使命にかられてって感じですが、こちらはかなり強い神様の中でも抜きん出た存在が、「やだ今日はコタツからでたくない」とわがまま言うので、あれもこれも都合のいいオプションを盛り沢山揃えて、人間界に降りてきた。そりゃーどうやったって死なない。勝つにきまっている。それゆえ、ハラハラする箇所なんかなくて、痛快爽快な作品ではある。あんまインドとかあの辺りの作品はないので読めて幸せ。2022/02/04