内容説明
作家生活70年。今、蘇る曾野文学の醍醐味。初期10作品、初の単行本化!
著者等紹介
曾野綾子[ソノアヤコ]
1931年、東京生まれ。聖心女子大学文学部英文科卒業。79年、ローマ教皇庁よりヴァチカン有功十字勲章受章。87年、『湖水誕生』で土木学会著作賞受賞。93年、恩賜賞・日本芸術院賞受賞。95年、日本放送協会放送文化賞受賞。97年、海外邦人宣教者活動援助後援会代表として吉川英治文化賞ならびに読売国際協力賞受賞。2003年、文化功労者となる。1995年から2005年まで日本財団会長を務める。2012年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
97
曽野綾子の初期短編集。10篇。「鬼瓦」が1955年なので、著者24歳の時の作品。「夢幻」は1969年、著者38歳。初めの5篇は1955〜1959年まで、人物描写も淡白で展開も唐突であるが、残りの5篇(1964〜1969年)は、見違えるように、割り切れない人間の感情を抉り出すような見事な作品。特に表題の「夢幻」のアメリカ人から見た日本人妻の百合子との人生模様は、善人でも悪人でもない人間を描いたもの。強烈な印象を残す。「方舟の女」で夫の妻以外の過去の女とのときめき、「二人の妻を持つ男」の船長が、心に響く。2023/11/07
TI
5
1950-60年代に書かれた短編集。当時の作品らしく全体的に硬質な文体。特に波があるわけでもなく淡々と進む。 今から60-70年前なのに書かれている風景はあまり今と変わらない感じがする(それなりの階級だったからかも)。2023/11/20
peace land
3
曽野綾子さんの本はたくさん読んだけれど、初期にはこういう本を書いていたのかと感慨深かった。皮肉とか世間のこととか諧謔的なものはなくまっすぐに文章と向かい合っている感じ。2024/04/20
白いカラス
3
曾野綾子さんの初期の短編集です。曾野さんの作品はほとんど読んだことはなかったです。作品的には古いですが「変身」、「夢幻」が良かったですね。2023/11/10
アーミー
2
逝去された作者を偲び、手に取った短編集。9編の夫婦間の身近なエピソードが丁寧に描かれていた。1955年から1969年にかけて週刊誌などに掲載された短編小説だが、作中の登場人物たちが直面する出来事は、現在でもあり得ることで、現実的なことと思えた。作者の著書は『神の汚れた手』や『天上の青』など、人間の欲望と良心をテーマにした作品が多いが、今まで短編はあまり読んでなかったなと反省。改めて読んでみると、作者の人柄がわかる温かな視点で人の内面を捉えて書かれているのがわかった。ご逝去を惜しみつつ、ご冥福をお祈りする。2025/03/23