出版社内容情報
才媛の女子学生初野を中心に,その崇拝者である純情可憐の子爵令嬢芳江,芳江の許婚の東大生東吾,初野に野心をもつ才子の美術家殿井など当時の男女学生の尖端的風俗と生態を描きつつ,恋愛,背信,死など劇的事件をからませている.明治36年「読売新聞」に連載され,新聞小説界に画期的な好評を博した天外のもっとも有名な作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aki
11
前編。お金のやりくりに困り、面白いほどたくさんの問題を巻き起こしながらどんどん窮地に追い込まれていく初野。ドジや間抜けではないけれど、その真面目さゆえに融通が利かず、親友の親や兄ともトラブルに。学問も修めて自己主張もちゃんとできるしっかり者のように見えるけど、男性に対する警戒心がなさすぎるというか、無防備すぎるというか…そのせいでいろんな人からあらぬ疑いをかけられ、頼る先がなくなっていく。魔風恋風の「風」、前編では魔風ばかり吹いているけど、後編では初野にも恋風が吹くんだろうか。旧字体読むの楽しくなってきた2015/10/08
みつ
6
冒頭は春爛漫の女学校創立10周年の祝賀会。そこに典型的な女学生の服装と髪型で颯爽と自転車に乗って現れるヒロイン萩原初野。その自転車が書生とぶつかり初野は転倒して・・とここまでは、まるでひと昔(もっと?)前の少女漫画のようでもあるが、彼女が怪我で入院するくだりから状況は一挙に暗転する。千葉県から上京して過ごす下宿屋の生活ぶりはつましく、妹の上京、兄(明治民法上の「戸主」)の援助打ち切りで金の算段に明け暮れることに。「女学生の系譜」「漱石と三人の読者」他で結末は既に知っているが、初野のこれからに目が離せない。2021/03/01
ナギ
5
卒業試験を控え、貧乏に苦しむ女学生・萩原初野の濃い日常を描いた小説。前半は少女漫画、後半は昼ドラ風味。読みにくいですが、慣れると中々に魅力的な文章。古めかしい表現の中に、ふと英語読みの単語が挿入されてたりしてクスリと笑ってしまいました。2014/03/07
Kotaro Nagai
3
本書は明治36年読売新聞に連載された作品。リクエスト復刊での入手なので、旧字・旧かなのまま。加えて独特の当て字が多く慣れるのにかなり時間を費やした。前篇は、ヒロインの萩野初野が怪我の治療費に端を発した金策にまつわる苦労が語られる。明治30年代の男女学生の暮らしぶりや社会の描写が興味深い。当時としてはヒロインが独立心が高く、見ず知らずの人からいわれのない親切は受けない態度など、なかなかに進歩的な造形で新鮮。それが為にあちこちで苦難に遭う。後篇でどうなるのか。。2021/05/07
あにこ
3
タイトルと冒頭から、明治時代の活発なお嬢さんを軸とした少女漫画チックな青春物語を勝手に思い描いていたのだが、いざ蓋を開けてみると甘酸っぱさもクソもない! とはいうものの、筋書き自体は悪くないので、続きが気になってしまう。ヒロインである筈の萩原様の境遇が悲惨すぎて最早笑えてくるレベル。これで美人じゃなかったら野垂れ死んでもおかしくない。しかしこの世の中、やはり最終的には金が物を言うのである。そんなわけで殿井氏にはぜひ頑張って頂きたいな、と。2015/03/12