内容説明
2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。その後、全世界の注目する中で、彼らのエクソダス(脱出)が始まった―。壮大な規模で現代日本の絶望と希望を描く傑作長編。
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年、長崎県佐世保市生れ。武蔵野美術大学中退。大学在学中の76年に『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、芥川賞を受賞
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感想・レビュー
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遥かなる想い
286
日本にいると海外の状況 特に アフガンで何が起こっているかには疎く、 時たま見る映像で遠い国の出来事をぼんやり 知るしかない。本作品は中学生を主人公に 据え、現代日本が抱える問題を巧みに描いて いる。将来へのぼんやりとした不安と ゆっくり進む衰退への道..日本には 本当に希望がないのか、そこから脱出するためには 何をすればよいのか..読みながら感じる 中学二年生のポンちゃんや中村君への 著者の視線の優しさ..本書は村上龍が 送る若者への応援歌なのかもしれない。2016/04/30
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
124
「この国にはなんでもある、ただ希望だけがない」この言葉がすべてを言い表している。バブルが崩壊して閉塞感のある日本を描いた作品だが、現在もその状況は変わっていない。それどころか、むしろ以前より深刻になっていると思う。中学生が反乱を起こす。学校を捨て、日本を捨て、自らが理想とする国家を形成する。荒唐無稽な設定であるとは思うが、本当にいつかこのような若者たちが出てきて現状を破壊しないと、日本は立ち直れないかもしれない。★★★★
ちょこまーぶる
107
難しかったけど、色々な事を考えるきっかけになった一冊でした。金融論の展開場面は、経済の知識が全くないのでほぼ理解できないまま読み進むことになったけれど、希望の無いこの国に対して中学生たちが自分たちで自立・独立していく姿には、彼らが見切りを付けざるえない社会にした大人への反省を行動で促していることには共感できます。そして、若者だからこそ希望を叶えるエネルギーを誰もが内に秘めているという事を、作者は若者に訴えかけてもいるのかな?とも思いましたね。彼らが作った町は希望に満ち続けてもらいたいものです。2015/04/03
オリックスバファローズ
96
中学生の目線では、いまの大人たちはどう映るのだろうか。 危機感の欠如した大人よりも、自分の将来を真剣に考えている子どものほうが、アイデアや行動力を持ち合わせているのかもしれない。
がたやぴん
83
再読。日本の危機を描いた作品こそが著者の真骨頂だと再認識。希望や自由を求める中学生を記者が個人の目線で描いた作品。フィクションだと理解しているのに、現実に起きてもおかしくないと思いながら読んでしまう。物語は、象徴となった紛争地の若者から、国内で立ち上がった中学生への話に移る。物語は、教育やITや金融だけでなく、エネルギー、少子化、メディア、政治など国を揺るがしかねない問題を交えながら彼等の闘争を記録したような内容。年齢や立場毎に受ける印象は大きく違うだろう。まだ、古くなった印象は薄いので再読必至。2016/01/05