出版社内容情報
宝永五年,単身生命を賭して異域に布教せんとして渡来し幽囚の身となった偉僧シロウテとその吟味役新井白石との対決は,わが国きりしたん史の最後を彩る一幕であった.本書は白石がその質問応答を記録したもので,奉行所における糺問のこと,彼から聴聞した諸外国の歴史地理風俗等,また天主教の大意とその批判を述べている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
131
本書は新井白石が、宝永年間(18世紀初頭)に日本にやってきたジュアン・シドッチ(本文ではヨワン・シロウテ)を尋問し、彼から得られた知識を綴ったものであるが、幕府の秘密資料として明治になるまで公刊されることはなかった。上巻では尋問の経緯等が記され、中巻では主として世界の様子が語られる。日本は当時、鎖国下にあったが、オランダからのいわゆる「風説書」によって、世界情勢を把握していたし、地球が球体であることなども認知していた。下巻では各国の軍事、また相当に踏み込んだキリスト教に関する考え方などにも触れている。2014/03/24
壱萬参仟縁
22
22頁~の超小さい文字(1行分を2行分割いているため?)。上巻はカタカナが少ないものの、地名のようにカタカナと漢字表記の苦労がもの凄いと思われた(中巻33頁~)。附録も今度は漢字が多く、これまた書き下し文もなくて読めない。読みづらし。多少の線画がある(108頁~)ので、その辺の時代背景は臨場感がある。要約だけでも、という私を含めて求める人は、150-1頁のみでも読むとよい。上巻は奉行所にて羅馬人召対糺問の事を記す、とある。2015/10/17
にゃん吉
6
東洋の英才である新井白石の、宗教的信念と西洋的知識を兼ね備えたシドッチへの尋問の様子、それをふまえて示される天主教の解釈をはじめとした西洋の文物に対する見解や、シドッチの所持品の図等々、非常に興味深い東西の邂逅というカンジでした。付録の報告書(?)で、シドッチと遭遇した島民がキリスト教に教化されていないか確認のため踏絵をさせたが問題なかったといったくだりもあり、島民からすれば、シドッチとの邂逅は、対応を間違うと生死にかかわる災難だったのかもしれませんが。 2019/09/02
Mentyu
4
新井白石と宣教師が対面した時の報告書と関係文書が集成されている。文中で新井白石が論理的にキリスト教の内容を退けていく様子は、どこか近代人に近いものを感じる。布教内容については非論理的であると白眼視しているが、宣教師本人との関係は良好であったらしく、助命と早期帰国を幕府に要請している。随所でキリシタン弾圧が歴史上の出来事として扱われているのも興味深い。この宣教師シドッチは結局禁じられた布教をして獄中死するのだが、どうやら近年遺体が発掘され、骨格から顔も復元されたという。2019/02/24
式
3
上巻ではシドッチ潜入事件の経緯と尋問の進行状況などの概略。中巻は世界の地理、パタゴン巨人族の伝説、スペイン継承戦争の詳細な経過。下巻はシドッチへの尋問の詳細、キリスト教の概要とそれらに対する白石の反論。白石は博覧強記で論理的な反論をしているが、西洋の学問を形而下だと規定して一定の価値を認めていた。問答の中で名場面もいくつかあって面白い。シドッチの挙動に対する白石の反応も興味深い。2021/05/31
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- 教育概論 (3訂版)