内容説明
2000年代に入り、PISA学力調査によるランキング・ショックが世界を揺るがした。各国は学力格差を縮めるために何をしているのか。どんな方策が有効と言えるのか。現地調査にもとづく分析を踏まえた、示唆に富む論考、特色ある取り組みを紹介し、日本の現状を考える。
目次
序章 学力格差是正というテーマ
第1章 アメリカ―企業型経営の成果と代償
第2章 オーストラリア―先住民の社会的包摂をめざす取り組みにみる学力格差是正策の特徴
第3章 イギリス―擬似市場化のなかの格差是正
第4章 フランス―学力二極化に対する共和国の挑戦
第5章 ドイツ―格差是正に向けた連邦・州・学校における多様な取り組み
第6章 日本―「確かな学力向上」政策の実相
終章 学力格差是正策の現状と課題
著者等紹介
志水宏吉[シミズコウキチ]
大阪大学大学院人間科学研究科教授。学校臨床学、教育社会学
山田哲也[ヤマダテツヤ]
一橋大学大学院社会学研究科准教授。教育社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
18
第2章の豪州では第1次産業従事者の子弟の教育に苦労しているようだ。フランスではブルデューらが1993年に『世界の悲惨』においては、80年代以降に教育拡大と就学長期化が進むなか、より継続的・段階的、ソフトなやり方で、リセや高等教育の遅い時期まで選別が引き延ばされ、教育システムの内部から排除された者を生み出したと指摘。日本の学力格差是正策は、他国より立ち後れている。マイノリティや貧困層や地域に積極策を講じていない(207頁)。能力の社会的合意を変更して、異なる学力を構想できる(228頁)。2015/08/23
わらび
1
日本を含めた世界六ヶ国の教育格差の現状と是正に向けた取り組みがまとめられている。やはり六ヶ国それぞれで是正政策が様々だが共通することもある。それは「しんどい」層や子どもへの重点的な指導、支援である。一部の特別扱いするのは不平等であるという意見も納得できるが、著しく学力が低い層の教育に対してお金をかけ、その層の子どもが少なくとも標準レベルの学力をつけ、標準的な職に就き、標準額の税を収めれば事実上は社会全体に還元されることになる。大切なのは政策の効果を長期的な目で見ること。2016/11/20