出版社内容情報
古代オリエントに誕生し,人間の歴史にはかり知れない影響をおよぼした壮大な物語の殿堂が,現代の日本語によみがえる.宇宙の創成,民族千年の興亡,終末観に閉ざされた社会と文化,愛のよろこびに震える魂の歌-ここにはすべてがある.旧約聖書学の進展を踏まえ,最前線に立つ気鋭の訳者陣が渾身の力で取り組む,画期的な新訳.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
63
バビロン捕囚の時代を背景にした預言者エゼキエル。幻を多く語ることから、祭司であると同時に呪術師のような存在であったような気がしてなりません。諸国民への審判預言も見られることから、行動に対する報復をも意味しているのでしょう。ただ、そこにイスラエルの将来像を述べ、ヤハウェの新しい聖なる神殿となることを提示しているのは確かだと言えます。2017/12/09
イプシロン
33
読了したのは、新共同訳ハンディバイブルである。だが、非常に重要な概念が書かれていたので、備忘録をかねて、こちらに感想をば。昨今、巷を騒がせている「自己責任」の概念が、はっきりくっきりと文字として記されていることに驚いたのだ。時は紀元前6世紀である。アリストテレスが『ニコマコス倫理学』で、論理的に選択の自由と責任を論じたのは、それから2世紀ほど後なのだ。こうしたことは、従来の学説を覆すほどのものがあるかもしれないが、それほど注目されていないことは不思議である。人類が共同体をつくり、文明国家をつくり、2021/12/22
きゃんたか
18
エレミヤが内地の預言活動に勤しむ頃、エゼキエルは捕囚民としてバビロンに連れ去られていた。神殿に蔓延る愚行の数々を知り尽くしていた彼は、エルサレムから主の栄光が離れ去るという幻をかの地で目撃して筆を執る。レヴィナスの引用で知られる呼子笛の譬えの如く、責任主体は危機の伝達を己のみならず、それを知らない他者の為にも証さなければならない。その行為は他者の賛否の如何を問わず、果たされねばならないのだ。さらに一歩を進めて、救済は人力によらず、主の威厳の故に必ず果たされるという希望に満ちた託宣で以て本書は締め括られる。2017/12/15
Fumitaka
2
当たり前っちゃ当たり前なのだがヨハネの黙示録はかなりこれに負ってる気がする。ゴグとマゴグとかも登場している。バビロニアに対しては彼らが攻めてきたのはイスラエルが堕落したから神様が剣を与えたのであって天罰だから仕方ないみたいな書き方がされる一方、エジプトとかツロに関してはボロクソ言っている。月本昭男先生の仔細な解説によると、ゆえのない話ではないようだ。月本昭男先生は創世記も担当してらっしゃるが、何だかこのシリーズの中では割と俺好みの文体を書いてくださってる気がする。私は好きだ。2019/12/10
しいかあ
0
エゼキエルはバビロン捕囚時に捕囚先で活躍した預言者。その預言の特徴は喩え話や象徴行為を多用したイメージの豊富さにある。その豊富なイメージ力(妄想力?)をもって、ついには俺の考えた最強の神殿を詳細に設計しちゃったりしている。預言者の中でもシャーマン的な特徴を強く持った人だったのかもしれない。2015/02/15