内容説明
若者の非正規化・低技能化・非婚化の一方で進行する超高齢化。潜在的には誰もが弱者に転じうる時代が到来し、新たな生活保障システムの構築が差し迫った課題になっている。人々の暮らしを持続可能にするためには、教育→雇用→社会保障という一方通行的で仕切られた生活保障を転換し、それぞれが密接に連携した双方向的・動的な制度に組み替える必要がある。そのためにはどうすればよいのか。第一線の論者たちによる具体的提言。
目次
序章 生活保障の新しい戦略
第1章 教育と仕事の関係の再編成に向けて―現状の課題・変革の進展・残された課題
第2章 多様な形態の正社員―非正社員と正社員のキャリアの連続に向けて
第3章 若者の自立を保障する―学校から労働市場へ
第4章 日本の生活保護・低所得者支援制度―ワーキングプア層への目配り
第5章 「給付付き税額控除」か「ベーシックインカム」か―イギリスの制度改革から学べること
第6章 低所得高齢者向け最低生活保障制度の確立―最低生活を保障するための選択肢
第7章 生活困窮者支援の一環としての家計再生ローン―相談支援とセットになった日本版マイクロクレジット導入の課題
著者等紹介
宮本太郎[ミヤモトタロウ]
1958年生。中央大学教授。比較政治・福祉政策論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
24
学校から就業への移行が困難になり、また超高齢社会と言われ、全世代において生活することそのものが困難になっています。雇用状況は非正規雇用が拡がり、過労死があまり前になる状況のなか、社会保障を支える基盤が崩れてきています。本著はそうした問題意識のもとに、新しい生活保障制度をどのように築く必要があるのか問題提起されていました。論者によっては再分配機能はなくなり税制度の見直しの必要性を問うなど必ずしもその中身に同意できないものもありましたし、編者の理論にも疑問点はあります。でもいろいろと考えることができました。2018/08/22
tolucky1962
7
高齢化,雇用不安定化,国債増加,格差。かつて,企業が教育し,社会保障は高齢者,障がい者が対象。非正規化の中社会保障と再生機会が必要。教育,雇用,社会保障を語る。1,再生機会を奪う行教育を批判し教育・仕事の再編成を提案。2,正社員像が崩れ,あらたな多様な雇用契約を議論。3,若者の自立政策を考える。4,低所得者支援制度を説く。5,給付付き税額控除,ベーシックインカムを議論。6,低所得高齢者向け最低生活保障制度を提案。7,相談支援とセットの困窮者支援ローンを示す。社会保障費が増すなか難しいが,解決策が必要。 2018/10/30
saiikitogohu
0
「企業は従業員にとって、本来は外部機能となるはずの教育や社会保障の機能をも取り組んだ強固なコミュニティであった。…男性稼ぎ主の勤労所得は、妻や子供など不要家族すべての生活保障となっていた…これが住宅関連などの企業内福利厚生と相まって、雇用が社会保障の機能を代替する形が現れた。…日本の生活保障は、教育・社会保障コミュニティーと言う性格を強めた雇用を軸に、これを事前の学校教育と事後の社会保障が挟む形で成立した…」3「企業自らが職業的機能や社会的リテラシーについて「学校」としての機能を引き受けたために、」続く2021/02/22