出版社内容情報
中世から近代への歴史潮流の中で「黄金時代」を築いた一七世紀オランダ。欧州低湿地の小国は、いかにしてプロテスタントの連邦共和国として資本主義、民主主義、科学技術という近代の支柱が胎動する舞台となったのか。オランダを「世界への窓」とした江戸期日本、そして米国へと播種されたその意味を捉え直す立体世界史の試み。
【目次】
はじめに――「近代とは何か」という問いかけ
Ⅰ 近代の基点としての一七世紀オランダ――その世界へのインパクト
1 ピョートル大帝のオランダでの船大工体験
2 日蘭関係の原点、リーフデ号の漂着とは何か
3 アメリカに埋め込まれたオランダのDNA
4 なぜオランダは近代の揺籃器となったのか
5 ドン・キホーテの時代だったスペイン
6 ポルトガルが先行した大航海時代と天正遣欧使節
7 日本の大航海時代1――御朱印船貿易から鎖国へ
8 日本の大航海時2――鎖国とは中国からの自立でもあった
9 台湾をオランダが支配していた時代
10 宗教改革が突き動かしたもの
11 「東インド会社」という装置
12 フェルメールが生きた時代
13 レンブラントとユダヤ
14 近代への嚆矢としてのデカルトとスピノザ
Ⅱ 江戸期日本と世界――西欧との出会いと中国からの自立過程
1 モンタヌスとケンペルの『日本誌』
2 石見銀山と銀の地政学
3 キリスト教の伝来と禁制
4 それからのキリシタン
5 オランダ商館長の江戸参府のインパクト
6 「オランダ風説書」と江戸期日本の世界認識
7 朝鮮通信使にみる江戸期の日・朝鮮関係
8 「国交なき交易」としての江戸期の日中関係
9 多摩の地域史が世界史に?がる瞬間
10 東洲斎写楽はオランダ人か?――浮世絵再考
11 新井白石と荻生徂徠――時代と正対した二人の儒学者
12 本居宣長とやまとごころ
13 「蘭学」の再考察と杉田玄白なる存在
14 江戸期の琉球国と東アジア、そして沖縄の今
15 蘭学の発展とシーボルト事件の背景
16 世界を見た漂流民の衝撃――『韃靼漂流記』から『環海異聞』
17 アメリカとの出会いとその意味
Ⅲ 欧州のパラダイム・シフト――近代を考える視界の拡大
1 英蘭関係の複雑な位相1――ピューリタン革命まで
2 英蘭関係の複雑な位相2――王政復古から名誉革命 英国史に埋め込まれた経験知
3 欧州における一七世紀フランス――ルイ一四世・絶対王政がもたらしたもの
4 ドイツ史の深層とオランダとの交錯
5 プロイセン主導の統合ドイツに幻惑された明治期日本
6 一七世紀世界の相関を映し出す「青い眼のサムライ」――三浦按針という存在
7 科学革命における「コスモスの崩壊」とは何か
8 科学革命の影としての魔女狩り
9 人間機械論の変遷――デカルトからAIまで
Ⅳ 中東・アジアへの視界――イスラムの世界化と帝国の興隆
1 イスラムの世界化とアジア、そして日本
2 オスマン帝国という視角からの世界史
3 オスマン帝国の後門の狼、サファヴィー朝ペル