出版社内容情報
インドでは,ヒンドゥ・ナショナリズムと市場主義が猛威をふるい,人びとの生を脅かしている.しかもそれらが民主主義によって正当化されている.同様のことは,世界中で起きているのではないか.注目のインド人作家がしなやかな言葉でつづる政治エッセイ集.ウォール街占拠
内容説明
インドでは、市場主義とヒンドゥー至上主義が猛威をふるい、人びとの生を脅かしている。しかも民主主義がその暴力を正当化している。同様のことは、世界の至る所で見られるのではないか。そしてまた、各所で起きている小さな抵抗に、これからの希望を見出すことができるのではないか―。注目のインド人作家がしなやかな言葉でつづる政治エッセイ集。ウォール街占拠運動でのスピーチや、初来日時のインタヴューも収載。
目次
1 帝国の心臓に新しい想像力を―ウォール街占拠運動支援演説
2 民主主義のあとに生き残るものは―2011年3月13日に予定されていた東京講演
3 資本主義―ある幽霊の話
4 自由―カシミールの人びとが欲する唯一のもの
5 インタヴュー 運動、世界、言語―20113月11日の翌日、東京にて
著者等紹介
ロイ,アルンダティ[ロイ,アルンダティ][Roy,Arundhati]
1961年インド生まれ。作家。ニューデリー在住
本橋哲也[モトハシテツヤ]
1955年東京生まれ。東京経済大学教授。イギリス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yooou
9
☆☆☆☆★ カシミール、インドの自由市場原理主義、ヒンドゥー原理主義によるすさまじい人権蹂躙の現実におののくばかりだ。また3.11の際、彼女が日本の東京の僕らがあの時に見上げた同じ空の下にいたことには驚くとともにとても強い絆を感じました。2013/02/06
壱萬参仟縁
5
評者は先月の衆院選低投票率で民主主義は死んだと思う。違憲状態だから無効とは思うが。ガンディーの自給自足の伝統に社会主義も生きているインドの著者周辺には安堵(41ページ)。貧しさを利用して儲け、ノーベル賞というのは皮肉な謂い(68ページ)。そうした面もあるだろうな。ナルマダ・ダム建設反対運動は、日本人にとってODAでインドネシアやフィリピンで裁判沙汰になっていることからも看過できない問題。民主主義は何度も人間に試練を課すものなのかもしれない。最悪、人類は戦争や暴力に結びつく極めて利己的な存在なため。難しい。2013/01/23
メルセ・ひすい
5
3.11の東京でのインド人としての日本人の地震対応の凄さ。…奇跡だ!建物も、橋も、高架道路も一つとして壊れていない。街は危機のさなかにあっても、誰もが他人を気遣っていた。瞬く間に、家に帰れない人が夜を過ごすシェルターができ、食べ物と水が配られ、公衆電話を使う列ができたが、それでもパニックは起きなかった! インドでは市場主義とヒンドゥー至上主義が猛威をふるい、人々の生を脅かし、民主主義がその暴力を正当化している。同様のことは世界中で起きているのではないか。インド人作家がしなやかに綴る政治エッセイ集。2012/12/19
Levi
5
インドで多くの農民が自殺しているのは知っていたが、遺伝子組み換え作物の問題だと思っていたが、マイクロファイナンスがその一端を担っているとは思いもしなかった。制度でも道具でも使いようによっては人が不幸になることを改めて思い知った。そして、インドで起こっている人を人とも思わぬ行為に愕然とする。さらにカシミール問題・・・日本では新興国として取り上げられることが多いインド、しかしその実情があまりにも知られなさ過ぎるのはいかがなものなのか。2012/11/17
ophiuchi
4
富の極端な集中、カシミール地方の惨状、先鋭化する宗教対立・・・ 民主主義国中で最多の人口を有するインド。その実情がいかに伝えられていないかが分かりショックだった。2012/10/15