プルースト/写真

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  • サイズ B6判/ページ数 235,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000246088
  • NDC分類 950.28
  • Cコード C0098

出版社内容情報

写真技術を創作の核心に据えるプルースト.その生涯を遡り,『失われた時を求めて』の具体相に深く分け入り,20世紀の認識論にまで筆を及ぼす.有無を言わせぬ強い説得力をもつ卓越した写真家による画期的な芸術論!

内容説明

まだ誕生したばかりの新しいメディアであった写真。カメラという機器の可能性を追究し、その機能を方法化して文学創造の核心に据えるプルースト。ブラッサイは、写真文化の草創期を生きたプルーストの生涯を溯り、当時の興味深い写真文化の場面を紹介し、ついで『失われた時を求めて』のテクストの具体相に深くその身を浸し論じる。その視野は相対性論や二〇世紀の認識論にまで広げられてゆく。本書は、卓越した写真家ならではの有無を言わせぬ説得力を持つプルースト論にして秀抜な芸術論である。

目次

1 プルーストの生活における写真(情熱の誕生;写真の交換;プルーストの芸術形成における写真の役割)
2 『時を求めて』の鍵(マルタ騎士団の巨大な写真;ラ・ベルマのポートレート;夫の心をとりもどすためジルベルトは夫の恋人の写真を手に入れる ほか)
3 プルーストの思考への写真の影響(写真家のスタジオ;ルポルタージュ;ズームレンズ ほか)

著者等紹介

ブラッサイ[Brassa¨i]
1899-1984。本名ジュラ・ハラース。現ルーマニア領トランシルヴァニア地方のブラッショー生まれ。当初、ベルリンそしてパリで美術を学ぶ。日々の糧を得ていた政治新聞の特派員の仕事の必要上、写真とのかかわりを持ち、31歳で自覚的な写真家となる。1932年、33歳でブラッサイを名乗り、写真集『夜のパリ』を出版。以後、パリを撮り続けて、「パリの目」と呼ばれる。その作品の持つ記録性と神秘性が分かち難く結び付いた、詩的でリリカルな世界は周知のとおりである。ヘンリー・ミラー、プレヴェール、ピカソ、ジャコメッティ兄弟など多くのジャンルの芸術家たちと親しい交わりを持った。邦訳の著書に、写真集『夜のパリ』『未知のパリ・深夜のパリ』(いずれも飯島耕一訳)、評論『語るピカソ』(大岡信・飯島耕一訳)『作家の誕生、ヘンリー・ミラー』(飯島耕一・釜山健訳)がある

上田睦子[ウエダムツコ]
1930年生まれ。東京都立大学人文学部仏文科修士課程修了。ボードレールを専攻。青山学院大学、日本女子大学などで教鞭をとる。俳句結社『寒雷』同人。訳書に『10代の子を持つ親の本』『1848年』(いずれも共訳)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

62
服や髪型に無頓着なプルーストがこれほど写真を好んだのは、それが「時」に対して奇襲を仕掛けるからだろうか。ジルベルトが夫サン・ルーの関心を取り戻すため、夫の昔の恋人ラシェルの写真を手に入れ、(彼女が娼婦だった事など知りもせず)自らも厚化粧になっていく…そのようにプルーストにとっての写真とは、人生を発見し別の人生に再生させる手段だったのかも知れない。ブラッサイはプルーストを、青春時代の印象を蓄えそれを《現像し定着した》作家だという。《潜像》《暗室》等はいずれもプルーストを読み解くための重要なキーワードだろう。2016/05/12

兎乃

32
再読 / 漆喰の壁に古いLPレコードが数点ディスプレイされている珈琲屋さん。その中の一枚が妙に気に入り(店の人に尋ねられず)、目に焼き付け 探しあてたのが、Rickie Lee JonesのPIRATES。ブラッサイの写真が印象的。本書を読んで以来、ブラッサイとプルーストと、このアルバムの一曲目“We Belong Together”がワンセットの記憶になってしまっている。世界的な写真家であるブラッサイの 写真をめぐるプルースト論。一芸は道に通ずる。『失われた時を求めて』と併せてどうぞ、と思う。2015/07/21

dilettante_k

5
原著1997年。吉川訳の『失われた時を求めて』を読み進めるなか、写真を用いた描写の多さやプルースト独特の視覚性に興味を覚える。写真家でもある著者は、「写真狂」と言っていいプルーストの肖像写真への執着や『時を求めて』に頻出する写真への言及、光学器械を通したかのような幾つもの描写を取り上げ、写真を『時を求めて』の核心に据える。主題のひとつである想像(名)と現実(土地)のかい離を揺らぐ意識が、写真を結節点として展開していく。プルーストが、コレクションを繰りながら大長編の構想を練り上げる姿を想像するのも面白い。2015/06/18

子音はC 母音はA

3
プルースト本人の写真体験と思考醸成の紹介から始まり(失われた時を求めて)の各場面で出てくる写真の役割を詳細に読み解く。そして最後に彼が写真媒体を如何に文学に活かしていったかを丹念に資料から分析する。映画に還元できない物語の時間構造が明らかになる。2014/07/01

noémi

3
《失われた時を求めて》を読むにあたって、少しお勉強をしておこうと思って読んだ一冊だが、断念。「写真」というタイトルなのに、途中から全く写真がなくなり、登場人物とプルーストをめぐる実在の人物の相関関係がずらずらと述べられるにいたるのだが、正直「なんのことかさっぱり・・・」。(泣)これはある程度物語を読んで、またその途中で読めば、理解が深まるかも。プルーストという人は一種の肖像マニアで小説のモデルになりそうな人物の写真を集めるのが趣味だった。そしてその写真をじっとみつめながら、その内面性を探っていったという。2011/03/05

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