出版社内容情報
李白,トウェイン,原発とクロサワ,そして時を逍遥する無名の人びと――古今東西の〈記憶〉を旅する三六六日,一日一話.
内容説明
円柱の上で眠る聖シメオン、彗星とともに旅するマーク・トゥエイン、月を捕まえようとして溺死した李白、そして時を逍遥する無名の人々―。埋もれつつある小さな、そして人間的な“歴史”に向けられた、著者の厳しくあたたかい眼差しをたどる三六六日、一日一話。
目次
一月
二月
三月
四月
五月
六月
七月
八月
九月
十月
十一月
十二月
著者等紹介
ガレアーノ,エドゥアルド[ガレアーノ,エドゥアルド] [Galeano,Eduardo]
1940年、ウルグアイ・モンテビデオ生まれ。小説、随想、ノンフィクションやジャーナリズムを自在に結びつけた執筆手法で知られる。60年代からジャーナリストとして活動を始めたが73年の軍事クーデタで投獄され、アルゼンチン、のちスペインへ亡命。80年代には一大叙事詩的作品『火の記憶』三部作(邦訳飯島みどり訳、みすず書房、2000‐2011年)を発表し、世界的な評価を得た。作品は30を超す国で翻されている。2015年、生地モンテビデオで没した
久野量一[クノリョウイチ]
1967年、東京生まれ。東京外国語大学准教授。専門はラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
84
1月1日に始まり、12月31日で終わる「日めくり」で読む世界史。著者のガレアーノ(1940-2015)は、“収奪されたラテンアメリカ”を書くように、風刺のきいた文章で綴る。これが面白い。10月12日、〈発見〉にはこうある。「1492年、現地人は自分たちがインディオであることを発見した。アメリカ大陸に住んでいることを発見した。裸であることを発見した。罪が存在することを発見した。別の世界の王と女王、別の天国の神に従わなければいけないこと、そしてその神が罪と服を発明し、→2023/08/19
Koichiro Minematsu
58
歴史という長く永遠な時間の中の、弱くもはかなくもある人々の一瞬の濃厚な時間を、ガレアーノは切り取り歴史書にした。軽んじられない重い記憶が突き付けられる。2021/02/21
ケロリーヌ@ベルばら同盟
52
天然の森 花の香り 直筆の手紙 呼吸する権利 格子のない家 そして常識。それは、行方不明者の墓碑銘。国境、あるいは領土と称する有刺鉄線で締め上げられ、狂った気候と、毒の雨に苛まれる小さな星に降り積む歳月。楽園から追放されたアダムとイヴの末裔に記憶と記録が生まれて以来、紡がれ続ける日々の寓話。死者の数が生者よりずっと多いこの世界の、過去を親とする子ども達である我々が、未来の子ども達の親となれるのか、そこで語られる物語がどのようなものになるのか、どのようなものであって欲しいのか、静かに問われた気がしている。2021/03/24
けんとまん1007
50
歴史を綴った物語でありながら、それぞれの文章に静謐感が漂う。内容自体は、激しいもの、熱いもの・・いろいろあるが、この静謐感は著者の筆力なのだと思う。そんなこともあったんだ・・と、今に至る時間を振り返る。2023/09/04
ヘラジカ
41
366篇の短い世界史。1日1ページに満たない短さながらも、豊潤な物語を存分に内包している。エッセイ集や掌編集のような面白さがあった。きらびやかな歴史というよりはむしろ人類史の暗部を綴った日々は、シニカルで痛烈でありながら時たま詩的な美しさを見せる。無作為にページを開いても厚みのある文明と文化、人間の愚かさや醜さ、広々とした世界を感じることができる素晴らしい本。折に触れて開きたくなるだろう良書。2019/12/19