出版社内容情報
オルタナーティブ・モダニズムの先駆者
断片的紹介に止まってきたリベラ作品を、現地調査を踏まえて詳細に分析。波乱に富む作家の軌跡と得意な生き方をエピソードとともに紹介する。政治と芸術の相克を描き出し、ディエゴ芸術の21世紀的意味を浮き彫りにする本邦初の本格的研究。
内容説明
メキシコ壁画運動を推進し、脱‐西欧美術の先駆的存在として活躍した20世紀メキシコの巨匠ディエゴ・リベラへの再評価がいま世界的に進んでいる。本書は、移動不可能な壁画作品を多数実地に調査し、断片的にしか紹介されてこなかった数々のリベラ作品を紹介(図版500点以上掲載)。美術界の動向をはじめ、時代的・社会的背景をしっかり押さえた上でリベラの全貌を描き出す。「ピカソ剽窃疑惑」「ロックフェラー・センター壁画破壊事件」など20世紀美術史上のスキャンダラスな事件や、トロツキーとの関わり、フリーダ・カーロをはじめとする数々の女性遍歴と生涯5度の結婚等、興味尽きせぬエピソードを満載。欧州、米国、メキシコを股にかけて活躍し、戦後日本美術界にも大きな影響を及ぼした作家の波乱に富む軌跡を浮彫りにする。メキシコ社会の階級性と人種問題、ナショナリズムとマルクス主義の相克、社会主義の実現といった観点から作家の思想に肉薄。美術批評の枠を超えたダイナミックな20世紀芸術論。
目次
第1部 誕生からヨーロッパ留学まで―一八八六年~一九〇七年
第2部 ヨーロッパ時代―一九〇七年~一九二一年
第3部 メキシコ壁画運動の誕生―一九二一年~一九三〇年
第4部 グリンゴランディア(米国)での挑戦―一九三〇年~一九三四年
第5部 波乱に富むメキシコでの生活―一九三五年~一九四一年
第6部 晩年のメキシコ生活―一九四一年~一九五七年
著者等紹介
加藤薫[カトウカオル]
神奈川大学教授(専門=中南米・カリブ圏・米国ラティーノ美術研究)、美術評論家。1949年生れ。国際基督教大学卒業。メキシコのラス・アメリカス大学大学院芸術学科修了。メキシコ国立美術研究所(IIE)研究員を経て、帰国。1987年より神奈川大学助教授、国際経営研究所主任研究員を経て、1991年より現職。ヒスパニック美術史家として、南米植民地時代のキリスト教建築美術、メキシコ壁画運動、冷戦以後の芸術変容の研究等を精力的に進めるほか、各種の美術展・絵画展の企画プロデュースや、テレビの芸術番組制作にも関与(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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