出版社内容情報
戦場の事実を最もよく伝える従軍記。作家や兵隊たちは戦場で何を見、何を書き残したか、また何を表現しなかったのか。「負の遺産」の内在的な読み込みを通して、戦争の実相を浮き彫りに。文学研究のあり方にも新たな光を投げかける刺激的考察。
内容説明
日本は中国との戦争の決着を未だにつけることができていない。一つには戦争の実体を知らないまま戦後六十年を過ぎてきたからであろう。著者は、戦争に関与しなかった世代の「戦後責任」として、戦争の現実を忘却の彼方から掬い上げるべく、数多くの従軍記を読み込んできた。「ペン部隊」の名で中国戦線に派遣された作家たち。彼らは観戦者として何を見、何を書き残し、また何を記さなかったのか。一方、現実の戦闘に参加した無名の兵隊たちは自分たちの直接的な体験をどのように描き、戦争の記憶を戦後どのように表現してきたか。本書は、戦争とは何か、その意味を次世代へ伝えることを意識してまとめられた労作。テキスト読解の手法は文学研究として刺激的である。
目次
序章 いちめんの菜の花―二〇〇五年武漢の旅
第1章 林芙美子の従軍記―『戦線』と『北岸部隊』
第2章 「ペン部隊」の人たち(前線を描く;岸田國士『従軍五十日』;中谷孝雄『滬杭日記』;尾崎士郎『文学部隊』と『ある従軍部隊』;丹羽文雄『還らぬ中隊』;兵隊と共に歩いた作家)
第3章 日本浪曼派をめぐる小景(井上友一郎『長編小説従軍日記』と保田與重郎『蒙疆』;佐藤春夫『戦線詩集』 ほか)
第4章 一兵隊という位置(不思議な従軍記『一兵隊の中支那スケッチ帖絵と文』;小原孝太郎『日中戦争従軍日記』;山本武『一兵士の従軍記録』;東史郎『東史郎日記』)
第5章 兵隊たちの戦後―佐藤文夫の場合
著者等紹介
荒井とみよ[アライトミヨ]
1939年生まれ。奈良女子大学文学部国文学科卒業。元大谷大学文学部教授(日本近代文学)。「女性史総合研究会」会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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