出版社内容情報
今日ほど心の豊かさが問われ,その十全なる理解が求められている時代はない.この課題に応えるべく第一線で活躍中の専門家が最新の知見に基づいて新しい角度から切り込み,現代に生きるに必要な生きた知を提供する.
内容説明
現代精神医学の確立期に大きな影響を及ぼしたクレペリン。その精神医学思想の本質をなすパラノイア論に焦点をあわせて、パラノイア概念の現代的意義と、その射程の広がりを明らかにする。著者はまずパラノイアの概念史を通覧したうえで、対人恐怖に典型的にみられるパラノイアを具体例に即して検討し、「パラノイア中核論」の臨床的・理論的有効性を主張する。さらに思想家ルソーの社会思想に対する精神病理学的アプローチを通して、パラノイア問題の社会的・文化的意味を考察する。パラノイアを精神医学体系の基軸に据えて、精神医学のあり方に再検討を迫る意欲的労作。
目次
第1部 パラノイアとは何か(パラノイア概念の形成史;クレペリンのパラノイア論;パラノイア概念の解体史)
第2部 対人恐怖症論からみたパラノイア論(対人恐怖の臨床と精神病理;対人恐怖とパラノイアの関連性―パラノイアから2大精神病へ;パラノイア中核論)
第3部 ルソーの精神病理と思想(羞恥的人間関係と社会の構造;精神病理学からみたルソーの社会思想)