出版社内容情報
市民の覚書,公証人の登記簿,行政官の会計簿などの史料によって中世末期からルネサンス初期にかけての市民の政治・経済活動や法意識などを考察し,都市条例の研究のみでは捉えきれない生きた都市社会像を描く.
内容説明
フィレンツェを主とした、中世のイタリアの古文書―公証人の登記簿、都市行政官の会計簿、市民の〈覚書〉―にもとづき、中世末期からのルネサンス初期にかけての市民の政治・経済活動や法意識、女性の財産権などを考察し、都市条例の研究からだけでは捉えきれない、「市民の側から」の生き生きとした中世の都市社会像を描く。
目次
1 イタリアの中世都市
2 都市の理想と「真の市民」―14世紀フィレンツェにおける市民権
3 中世イタリア都市における公証人―民衆の法意識との関連で
4 中世後期イタリアにおける都市国家の膨張と市民―ヤコポ・デル・ベーネの会計簿
5 14世紀ピサの商業地区サンタ・クリスティーナ教区について―公証人文書による分折
6 家と家を結ぶもの―中世末期のイタリアにおける嫁資について
7 ある冒険商人の記録―ブオナッコルソ・ピッティの『クロニカ』
感想・レビュー
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人生ゴルディアス
4
フィレンツェが多め。コムーネやポデスタ、ポポロなどのよく耳にする統治機構の成立や、封建制があまり発達しなかった代わりに、都市部の法律が農村部にも適用されていたから、ドイツのような都市の空気は人を自由にする、というようなこともなかったなど。公証人の詳しい説明が一番面白かった。そういえば彼ら役人いなか不明瞭だったけど役人ではないのですね。嫁資の取り扱いや相続における財産分与との関係なども。著者は早逝された顕学との評価でその通りのすごくわかりやすい著書でした。長生きしてたら阿部勤也ポジションだったのかもしれない2021/06/19