出版社内容情報
とある宮殿に10人の遺産相続人が召集された.不思議な故人からの伝言.大いなる遺産とは何か.相続人たちは果してそれを手に入れることができるのだろうか.現代人の心と社会の行方を,鋭く問いかける寓話劇の傑作.
内容説明
エンデ寓話劇の傑作。不思議な遺言、莫大な遺産をめぐる人々の葛藤。絶妙のストーリーテリングで描く現代社会の縮図。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
98
遺産をテーマにしたエンデの戯曲。とは言っても具体的なことは出てこない抽象的な内容で難解だった。謎めいた宮殿と呼ばれる建物に集まってきた男女は遺産への期待に胸を膨らませながら、結局何も手にすることはない。遺産とという言葉を聞くと、家や土地、お金といった物質的なものを想像してしまう現代人に対する強烈な風刺がこの戯曲には込められているような気がする。物質ではなく、もっと精神的なものを大切にしないと、この戯曲の登場人物たちのように出口のない行き止まりで最期をむかえることになるのだろう。2014/09/07
iwri
2
本書の内容を一言でいえば、「囚人のジレンマ」を戯曲にした作品である。個々の人物は自分たちにとって利益を最大化するように動くのだが、それが全体最適に至らず最終的に破局を迎える…。経済学で言われる囚人のジレンマと同じモチーフが取り上げられているのは、後年のエンデと経済の問題を考えると全くの偶然とは言えないだろう。主人であるフィラデルフィアという名前は、友愛を指す言葉であり、エンデが依拠したシュタイナーの友愛の経済を思い起こさせる。あくまで見方の一つであるが、そういった社会批判的な視線を見ることもできると思う。2011/03/31
ヒサ子。
1
なんともエンデらしい!というのが、読了後、一番強く思いました。 宮殿のような生きている家に、遺産相続のために集められた10人の相続人たち、公証人、謎めいた召使い、宮殿の亡き主。 中心となるはずの亡き主を欠いた劇は、やはり喜劇のようで悲劇でもある。 それが、私がエンデらしい!と強く思わせた。 喜劇とも悲劇とも言い切れないからこそ、リアリティがあり、重みがある。そんな戯曲でした。2016/09/23