内容説明
死の不安や身辺交友の不調に加え、借金による生活の破綻に懊悩する百鬼園先生。大正六年から十一年に至る『百鬼園日記帖』『続百鬼園日記帖』を併せて収録。
目次
百鬼園日記帖(自大正六年七月至大正八年九月)
続百鬼園日記帖(自大正八年十月至大正十一年八月)
著者等紹介
内田百〓[ウチダヒャッケン]
1889‐1971。小説家、随筆家。岡山市の造り酒屋の一人息子として生れる。東大独文科在学中に夏目漱石門下となる。陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学などでドイツ語を教えた。『冥途』『旅順入城式』『百鬼園随筆』『阿房列車』など著書多数。1967年、芸術院会員推薦を辞退。酒、琴、汽車、猫などを愛した。本名、内田栄造。別号、百鬼園
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感想・レビュー
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いきもの
3
最初はなんだか滑稽味も薄く暗い。けれども何だかいつの間にかいつも通りの借金の話ばっかりになっていく。2021/04/17
みほこ
1
借金地獄の百閒
戸田健太朗
1
内田百閒の戦前の日記。日記なのでストーリーがあるわけでも盛り上がりがあるわけでもなく、家族の病気や借金や金策で苦しい様子を書き綴った内容なので明るい話ですらないけれど、合間合間にビールやアイスクリームを食べたりするのを欠かさないあたりさすが百鬼園先生。また、当時の風俗が伺える貴重な記録でもあるので、日記というのは案外重要だったりする。2013/08/08
Gen Kato
0
再読。大正六年から十一年までの日記。とはいえ、借金の積み重ね・登場人物・文体など、内田百閒ワールドが実録風に味わえる「作品」として読むべきだろう。解説にもある通り、同時代の日記としては『断腸亭日乗』が有名だが、どちらも「老い先短いから」「いつ死ぬかわからないから」と日記をはじめているのがおかしい。荷風も百閒も、ずいぶん長生きだったのになあ。2013/09/01
yunomi
0
内田百間といえば、いつも多額の借金に悩まされていた事で有名だが、本書を読めばその理由の一端を窺えるかも知れない。何しろ、寝坊をする度に人力車で通勤するわ、借金を頼みに行った帰りに外食をして酒を飲むわ、百間先生はとことん浪費家なのである。当然、借金は些かも減る事なく、借財はどんどん積み上げられていく。 その度に百間は懊悩し、我が身を情けなく思うのだが、実は心のどこかでこうした生活を楽しんでいたのではないか。毎日毎日、不毛な金策に奔走する百間の姿に、生きる事へのオプティミスティックな情熱を感じてしまう。2011/11/23