内容説明
昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。「山本五十六」「米内光政」に続く、著者のライフワーク海軍提督三部作完結編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
67
「海軍三羽烏」として日独伊三国同盟に強硬に反対した3人を著者(元海軍士官)は評伝にしているが、そのうち最も地味な井上成美から読み始めた。とにかく評伝の体をなすための著者の苦労が滲み出ているが、そこはさすがというしかない。完全な時系列の評伝ではなく(特に幼少時はほぼ捨象)、歴史的な出来事やエポックを縦糸、井上といろいろな形で縁のあった人々を横糸にしながら、その人物像を構成してあり、文庫で550ページあまりであったがほぼ一気に読了した。無私・無欲・高潔な、ある種の教育者としての井上伝とも言える内容。2022/09/05
KAZOO
27
阿川さんのこの小説を読むまでは海軍のことをかなり知っているつもりでしたがまるっきりわかりませんでした。ハードカバーでも読み文庫でも読んでさらに関係者の書かれた本まで読んで軍人でもこのような人がいたのかと思いました。歴史にイフの話はないのですが、海軍の本流に開戦直前に残っていたらなあと思います。そのような軍人は多いのですが2.26事件で亡くなった渡辺錠太郎教育総監も同じです。2014/10/05
鍵ちゃん
24
昭和50年の暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は終始無謀な対米戦争に批判的で兵学校校長時代は英語教育廃止論を退け、 敗戦前夜は1億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を尽くし、戦後は子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。私の生きていた時には生存していたとは。まだ子供だったけど逢いたかったな。2020/08/10
Willie the Wildcat
21
山本-米内-井上、”防衛”ライン。共通項は、国家と国民。違いは、思想の表現方法。大局を見据え、国を憂う。次世代育成が、常に井上氏の念頭。故に、戦争終結に奔走。無論、行儀作法、英語塾然り・・・。印象に残るのが、山本氏の開戦決意と、井上氏の応答。続く(3者の発言ではないが)「五寸釘」。言い得て妙!三者三様、根底の憂い・想いが支えあう。”最後”の海軍大将。米内氏の”次世代”への想い。自身の哲学に忠実すぎる故の誤解と冷遇。自然体で受ける井上氏の姿勢。胆力。敬意と共に、どこかもどかしさを感じる・・・。2013/08/10
樋口佳之
19
天皇制の存続さえ絶対条件とは見ていなかったとも読める部分が印象に残る。/三国同盟阻止に奮闘したこの方が、ではその発端となる中国侵略にどのような判断を持っていたのだろうか。/まるで自己否定となる職務に忠実に奮闘されていたのではないでしょうか。学校長時代、戦後の英語塾が救いのよう2017/07/17
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