内容説明
消えることのない歴史の傷跡、癒えることのない父の秘密、奇妙な謎を通して子どもたちに託されたひとつの願い。知的たくらみと愛に満ちた、巨匠による記念碑的長篇。◎解説=円城塔
誰もが相手に対して、やられたくないことをやられる前にやる──。
世界が囚われた相互不信のジレンマから、脱け出す道はあるのか?
第二次大戦、日系人収容所、ウォルト・ディズニーの機密プロジェクト……。
病める歴史の連なりは、やがて家族の秘密を照らし出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
51
上巻同様、一気読み。主人公(?)たる父の謎の言動。時にイライラするほどに意味不明。あるいは凡俗な者には理解不能な高踏的な、まさに虚々実々の駆け引きを宿命づけられた雲上人たるがゆえの当然の末路なのか。 どうしても吾輩は、主人公ら一家に表現者たるパワーズの陰を嗅ぎ取らないでは居られない。あまりに凡庸な読み込みで気恥ずかしくなるが、仕方ないか。虚実綯い交ぜの物語はひたすら乗せられ身を任せるしかないのだ。2026/04/27
スミス市松
19
再読。「われわれはときに、自分の意志で行動するよう他人にけしかけてもらう必要がある」――この小説は形式と内容の一致も含めてそのことを示してくれた。しかしそこに誰ひとり見出せなければ、私としてはこの言葉を思い出してほしい、「あの何より捉えがたい、あまねく執拗に在りつづける、つねに外からの助けを必要としている仲間(ジ・アザー・フェロー)〉がいるのだった。」(『舞踏会へ向かう三人の農夫』)。今この瞬間を動かすために、生きることと読むこと、書くことあるいは伝えていくことを、〈みんな〉と助け合いながら回していこう。2026/06/07
メセニ
19
10/10。文庫にて再読。父は僕たちにクイズを出し、質問を浴びせる。それが彼にとって最も得意なことであり、この世で唯一やり方を知っていることだからだ。父は僕らに謎でしか話さない。その問いかけは僕たち家族をいつも翻弄してきた。はぐらかしの達人なのだ。でも今ではわかる。それがこの上なく重要な問いかけであり、生徒たる僕たちへと託された宿題だったのだと−−。ホブソン家の父エディはなぜ、原因不明の病を患い、〈ホブズタウン〉なる架空の街に閉じこもらなければならなかったのか。→2026/03/14
teddy11015544
4
下巻になって何がどうなっているのか、わかるようになりました。なかなかに難解で刺激的な読書ですが、またRパワーズは読んでみましょうか、と思いました。2026/05/15
Ryo0809
2
第二次世界大戦下の米国を主軸に、戦中・戦後を問わず複雑化する社会情勢を囚人のジレンマになぞらえて描いた作品のようだ。確かに、二人の囚人の間だけでもジレンマに陥ることを思えば、億万の人間の間に発生する利害関係には正解など見つけ出せず、混沌とするだけだろう。だからこそ、ホブソン家の父親が家族に対して示す愛情や、母親と子供たちの父親へのちぐはぐなようで、太い絆が沁みる。一方、小説という虚構のなかに実在したディズニーを捏造して登場させるのは、心地よい読後感には至らず、腑に落ちなかった。2026/03/18




