内容説明
2月の日経朝刊「私の履歴書」が注目を集めた、日本のドキュメンタリー写真の第一人者として知られる著者の待望のエッセイ集。世界各地で戦禍を生きる人びとに寄り添ってきた半世紀にわたる撮影秘話が一冊に。それは分断が進む世界を生きる我々一人ひとりに警鐘を鳴らす「あすへの記憶」でもある。
戦争は終わっても終わらない。
生涯にわたって人々の「踏み潰された」記憶は心の奥に残り続ける――ベトナム戦争で使われた枯葉剤の後遺症に苦しむ人たち、ポル・ポト時代のカンボジアと圧政が今も続くミャンマー、広島・長崎の被爆者と被爆二世、アウシュヴィッツからの生還者、アフガニスタン戦争のロシア人帰還兵、沖縄戦の知られざる痕跡、コソボ難民、ウクライナのチェルノブイリと福島の原発事故のその後……あわせて世界各地に残る土着の習俗や信仰、伝承されてきたものづくりなど民族学的なテーマを追求することで「あすへの記憶」は重層性を帯びる。
撮影対象とは長年親交を結び続け、広島の被爆者家族との30年にわたる交流を細やかに丁寧に綴った一篇からは、戦争報道からこぼれ落ちてしまう家族のつぶやきまで聴こえてきて圧巻である。
目次
はじめに
I
あの目/文化の先進国/琉球絣のツバメ/ガザのツバメ/肩の傷/花嫁写真/被爆体験者/白菊の花火/藪から見ていた/メラネシアン・アート/「独立」とは?/ノー・モア/記憶の底/伝えてほしい/子どものことば/日登江ちゃん/福島のダチョウ/沖縄の青い海/サマショール/エフゲニア/シャッターチャンス/見えない戦争/よみがえる色/クメール織と陣羽織/目の輝き
II
ひまわり/クリミア/母なる言葉/はぐれ鳥/帰還兵/眠れないくらいなら
III
ヤシの木/北緯17度線/何のために戦うか/まさか! なぜ?/「やった」か「やられた」か/祈る人びと
IV
壊れたハート/人生は数秒でも貴重だ/パルチザン/ある結婚
V
B29とB52/東京大空襲/被爆者の家族/晴れた日に/爆死証明/武蔵野けやき会/平和の礎/「群れ」
VI
鶴見和子さん/志村ふくみさん
あとがき



