内容説明
言葉は喉の奥でつっかえ、想いは胸の底で燻る。東京の片隅で、影のように生きる青年・五十嵐遼馬。その人生を変えたのは、ボクシングだった。寡黙な青年は拳を交わし、生きた会話の喜びに目覚めていく。やがて立ちはだかるのは、悪霊に憑かれた異国のチャンプ――これぞ王道の灼熱、青春小説の名手がブッ放す魂の拳闘小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
68
人前でうまくしゃべることができず孤独、透明人間のように生きてきた遼馬の人生はボクシングで変わった。毎回楽しみな岩井圭也さんの新刊、今回はボクシングがテーマ。上京して、派遣で生活を支えていた遼馬は、ふと足を止めて覗いたボクシングジムに惹かれていく。会話はできず経験もない、それでも連日通う遼馬の日々が少しずつ変わっていく。決して花々しく上り詰めていくわけではないが、1試合ごとに生きる実感が感じられてくる。試合のシーンでは怪我の痛みと恐怖心とが伝わり、思わず目を閉じてしまった。心が温かくなるラストも良かった。 2026/03/28
aki
22
子供の頃から言葉を発することが思うようにいかず、イジメにあい誰からも話しかけられることがなく居場所がなかった遼馬が偶然出会ったボクシング。話せなくてもボクシングはできるという言葉に誘われるようにボクシングに打ち込んでいく。格闘技全般好きなので、試合のシーンは顔を顰めながらもその戦いぶりが鮮明に浮かんできて手に汗握る。対戦相手を通し、場数を踏んでいく中で、ひとりぼっちで居場所がなくなってしまう恐怖を持ち続ける自分自身とも向き合っていく。真っ直ぐに向き合ってきたからこその居場所を手に入れた遼馬の未来は大丈夫!2026/03/18
ほんメモ(S.U.)
14
すごく良かったです。ボクシングというスポーツは痛そう過ぎて見るのも無理な私ですが、主人公の内面が描かれる小説という形で読むと、不思議と入り込めてしまいました。(おそらく)場面緘黙症の主人公が出会ったボクシング。プロボクサーとしては勝ったり負けたり、怪我に怯えたり、ボクシングだけでは食べていけなかったり。単なるサクセスストーリーではないところがリアルで、勝つだけがスポーツの正解ではないのだということが伝わってきます。対戦相手のタイのボクサー視点の断章があり、最終章に効いてくる構成が特に良かったと思いました。2026/03/22




