内容説明
「あなたに『本当のこと』をひとつかみ差し上げましょう」川のそばにあるお菓子屋〈おやつ〉.ある日店を訪れた青年は,チョコレートと引き換えに不思議な「種」を置いていく.それをきっかけに,店主のエリカはかつて出合った一冊の本を思い出して……表題作ほか4篇+エッセイ.忘れられない本をめぐるささやかな冒険.
目次
物語の舞台袖
1 アリスのいないお茶会
『不思議の国のアリス』*ルイス・キャロル
舞台袖からの報告・1
2 ガリヴァーの囁き
『ガリヴァー旅行記』*ジョナサン・スウィフト
舞台袖からの報告・2
3 王子さまのいない星
『星の王子さま』*サン=テグジュペリ
舞台袖からの報告・3
4 灰色の男の葉巻のけむり
『モモ』*ミヒャエル・エンデ
舞台袖からの報告・4
エデンの裏庭
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
101
吉田篤弘さんらしいファンタジーな世界と沁みる言葉、散りばめられた伏線の数々にグッとくる一冊でした。「エデンの裏庭」も読み終わりたくなくてゆっくりゆっくり味わいながら。極上の読書時間でした。本のサイズへのこだわりとか、装幀も凝っていてそういう視点でも素敵な一冊です。 2026/03/03
KAZOO
96
岩波書店からの初の吉田篤弘さんの作品が出版されました。私は岩波の月刊「図書」を読んでいたことでそこに吉田さんが連載されていたのを読んでいたのでたぶん出版されるのかと思っていました。前半が連載されていたもので「不思議の国のアリス」「ガリヴァー旅行記」「星の王子さま」「モモ」を題材として時間を主題とした物語と書評を書かれています。後半はこの表題となっている小説で楽しめました。ハードカバーの本で大切にしたくなるような装幀です。2026/01/30
Ikutan
62
あらゆる物語には、舞台上で語られないことがあるはず。ということで、前半は、『不思議の国のアリス』『ガリヴァー旅行記』『星の王子さま』『モモ』、四つの名作を採り上げ、「物語の舞台袖」として吉田さんが創作されたささやかなお話と「舞台袖からの報告」と称した書評が、後半は、『エデンの裏庭』という短編が愉しめる贅沢な一冊。まず、「舞台袖」という発想が素敵。実は、物語は、どこまでも続いていくのだということ。エリカの冒険譚である『エデンの裏庭』も新たな始まりが感じられる余韻がいいね。誕生日のエピソードはびっくりだった。2026/03/27
あんこ
31
手に取った瞬間、妙に馴染むなと思ったら表紙カバーがない。サイズも愛らしく、宝箱のような一冊。吉田篤弘作品を楽しむ上で、物語はもちろんのこと、毎度この装幀へのワクワク感は欠かせない。手にした瞬間から、「私は今大切な本を大切に読むところ」という高揚感がある。 こちらの作品は、有名な作品のたらればのようなことと、吉田さんが「舞台袖」として書いたエッセイで構成されている上に、タイトルにもなっている幻の未完の作品が載っている何とも贅沢な一冊。読んでいる間、薄暗い図書館で日が暮れるまで読書していた頃の気持ちになった。2026/02/15
ユメ
17
「物語の舞台袖」という考え方は、非常に吉田篤弘さんらしいなと思う。というのも、私は『小さな男*静かな声』という作品の「そして、人生はつづいてゆく」という言葉がとても好きで、篤弘さんの紡ぐ全ての物語に対して、この言葉がしっくりくるような余韻の残り方を感じているからだ。本という形で切り取られた物語が終わっても、登場人物たちの人生は続いてゆく。篤弘さんの小説からはいつもそのことが伝わってきて、温かな気持ちになる。だからこそ、「物語の舞台袖」を覗きにいこうとする本書の試みを、愉快な思いで読んだ。2026/02/27




