内容説明
現代人が「源氏物語」を読むときのハードルとなるのは、ひとつは言葉の違い(古文の読解)、そしてもうひとつは倫理観や社会規範の違いです。本書は、社会の在り方に長く向き合ってきた作家・山崎ナオコーラさんが、深く愛する古典「源氏物語」について、現代人ならではの読み方を考えます。より現代的な訳を目指した「ナオコーラ訳」も読みどころのひとつ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
225
山崎 ナオコーラは、新作中心に読んでいる作家です。タイトルから著者版「源氏物語」かと思いきや、著者独断と偏見の「源氏物語」解釈本でした。「源氏物語」は、未来も読み続けられて行くんでしょうね。 https://www.book.tankosha.co.jp/shopdetail/000000001869/2023/03/21
アキ
121
現代の感覚で源氏物語を読むと、不倫だらけで、ロリコン、性暴力、ホモソーシャルにマウンティングとアウトなものばかり。それでも、源氏物語にはそれを上回る魅力がある。平安時代の社会規範は現代からは推測することは出来ても理解はできない。しかし、人間の行動は1000年前と現代でそれ程変わらない。登場人物はおよそ500人と言われる物語の多くは男と女としか書かれていない。著者はノンバイナリーと性自認している作家。ジェンダーという視点から捉えた源氏物語の読み方だけでなく、男女の行動から深くこの物語を考察している。2023/05/27
はっせー
70
源氏物語を読んだことがある人や源氏物語を読もうとしている人におすすめのほんになっている!この本は山崎ナオコーラさんが現代の視点から源氏物語を読むというスタイルになっている。例えばロリコン。主人公の光源氏は幼少の紫の上を自分のところへ引き取って自分好みの女性に育てて結婚した。確かにゴールは結婚かもしれないがやっていることなどはロリコンと言われていることをしている。この本は源氏物語はヤバい本だよって言っているわけではなく社会が変わっても読み続けられる源氏物語の読みの可能性を言及した本になっている!2023/12/06
うののささら
69
源氏物語をフェミニストのナオコーラさんが考察するとこうなるか。桐壺はマザコン、紫の上はロリコン、六条御息所はマウンティングなど登場人物と現代社会を絡めるのは楽しい。二元論の性別とステレオタイプの異性愛で語られる源氏物語。フェミニストとしては当時の女性の扱われ方は性犯罪でジェンダーに対する気配りがなく、女性が男性から自立して生きていけないのはいけない。物語の考察は面白くとても良かった。紫式部が書いた作中には名前はなく、名称は後の時代につけられたあだ名とは知りませんでした。2023/05/20
ぐうぐう
47
ナオコーラらしいアプローチで語られる『源氏物語』の、その新鮮なこと! ジェンダーやセクシュアリティ、格差といった現代的な視点で読み解かれていく(「末摘花」をルッキズム、「紫の上」をロリコン、「夕顔」を貧困問題で解読)のだが、それらの点に無自覚な『源氏物語』を安易に批判しているのではない(そもそも、千年前の作品を現代人の問題意識で批判することはナンセンスだ)。ナオコーラは、こう書く。「文学は、「善い行いを学ぼう」という学問ではありません」と。(つづく)2023/05/29