内容説明
作家を志して上京した青年小泉純一は、有名な作家を訪ねたり、医科大学生大村に啓発されたりして日々を過す一方、劇場で知りあった謎の目をもつ坂井未亡人とも交渉を重ねる。しかし、夫人を追ってきた箱根で、夫人が美しい肉の塊にすぎないと感じた時純一は、今こそ何か書けそうな気がしてくるのだった。――青春の事件を通して、一人の青年の内面の成長過程を追求した長編。(解説・高橋義孝)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
131
森鴎外の一種の教養小説のようで漱石の「三四郎」をもう少し難しくしたような感じでした。数十年前に全集で読んだのですが、今回読み直してみてかなりペダンティックな感じがしました。外国語をこんなに多用していたかなあという気もします。最初の方で漱石らしき人物も出てきたりします。鴎外の「イタ・セクスアリス」も読んでみようかと思っています。2023/08/31
Major
64
これは恋愛小説でもなければ、学生と未亡人というある種予想される危うい人間関係の中での微妙な心理の機微を中心に描いた物語でもない。全体的には主人公純一を取り巻く、学友、師、著名な人々との直接的、間接的な関わりと世間との交わりの中で、一青年が思索を育み、精神的に成長していく姿を描いた作品である。 登場人物を通して、漱石、蘆花、イプセン等の作品とその思想について断片的に語らせている。さすがに、ライバル漱石の思想について(漱石を模した人物をも登場させる。)たった数ページの中でその思想的な核心を端的 コメントへ続く2017/08/27
ちくわ
61
鴎外が漱石の三四郎に触発されて執筆したと知り読む。冒頭、主人公の名前がほぼあの人で笑う。感想…やや『こねくり』小説だが、文豪二人の恋愛観の違いを楽しめたように思う。漱石は三角関係好き?複雑なシチュエーションに緻密な心理描写で恋愛を描くのに対し、鴎外は移ろい易くも割とストレートで自然な恋愛感情を表現?まぁ素人意見なので捨て置き希望。個人的には恋愛よりも両文豪の関係が気になった。ヰタ・セクスアリスにも漱石の話が出てくるが、二人はどんな仲だったのか?作品から察するに、鴎外の方がより意識して(好意を抱いて)そう?2024/09/04
優希
55
教養小説なので、内面に重みを置いているようです。交渉を重ねていた未亡人が美しい肉体にしか見えなくなるのには鳥肌が立ちました。小説家を目指して上京した青年は何か書けそうな気がするのも怖いと思います。1人の青年の成長を描いた作品としては完成形なのではないでしょうか。2023/11/30
荒野の狼
43
森鴎外が「スバル」に1910年、48歳の時に発表した長編小説。本作には実在の人物をモデルにした登場人物が登場し、自然主義作家の大石路花は正宗白鳥、医学生の大村荘之助は木下杢太郎、平田フ石は夏目漱石、鴎外自身は毛利鴎村となっているが、主人公の小泉純一自身がフランス語や維摩経を学んだとしていることは、鴎外自身の小倉左遷時代の体験であるから純一本人=鴎外と考えてよい。2017/01/08




