内容説明
高齢者が再び“生きる力”を取り戻す
常識を変える介護の最前線
過剰なケアが高齢者から「生きる力」を奪ってはいないか――
全国の介護関係者が注目する
NPO発・新しい介護のかたち
介護保険制度が始まって四半世紀。施設は増え、サービスも充実しました。それでもなお日本の高齢者は「生きがい」「生活満足度」の国際比較でいまだに低い水準にとどまっています。年間11兆円の財源と多くの人材を投じても、なぜ幸せにつながらないのか。その問いに真正面から向き合った一冊です。
著者は2006年に神奈川県藤沢市でNPO法人を設立し、現在は43事業を展開する組織へ成長。厚生労働省モデル事業所にも選ばれ、全国の介護福祉関係者が日々著者のもとに見学に訪れています。
取り組みの中心にあるのは、従来の常識を覆す「ケアし過ぎない」という姿勢です。過剰なケアはスタッフの負担を増やすだけでなく、利用者の自尊心や役割意識を奪い、生きがいを損なう可能性があります。
この考え方を具体的な形にしているのが、著者が運営するデイサービスです。そこでは、要介護者や障がいのある人々がスタッフとして働いています。利用者がカフェ運営に参加し、働きに応じて賃金を得ることで、自立心や社会参加の意欲を取り戻しました。結果として、利用者の活力向上、スタッフの負担軽減、事業所の安定運営という多方面で成果を上げています。
本書では、なぜ“ケアし過ぎない介護”が高齢者の生きがいにつながるのか、その根本的な理由を丁寧に掘り下げていきます。さらに、利用者だけでなくスタッフも笑顔で働ける施設づくりとはどのようなものか、著者の実践例をもとに明らかにします。そして、日本の介護がこれから変わっていくために、私たちがいま何を選び、どこから取り組むべきなのか――その道筋を、分かりやすく示していきます。
介護福祉事業者、施設経営者、介護に関わるすべての方に向けて、介護の常識を再定義する一冊です。
目次
はじめに
[第1章]日本の介護福祉には「変」があふれている
利用者も事業者も幸せになる方法とは……
介護・福祉業界には「変」がはびこっている
国の報酬制度が介護従事者の処遇改善を妨げる
現行制度は介護を受ける人の幸福を軽視している
利用者と職員が一体になれる介護福祉サービスを目指して
[第2章]ここが変だよサービス編
利用者を介護するのが前提で自立を促していない
すべての利用者がいきいきと活動できる環境を整えるのが事業者の役割
介護される側の意思を反映できない介護保険制度の奇妙さ
精神的な自立こそが利用者にとって真の幸福
介護をする側と受ける側との意思疎通が肝心
周囲の人間が一丸となって取り組む「共創」
日常生活に基づく「生活リハビリ」
楽しみによって心を回復させる「遊びりテーション」
「つながりゼーション」で今を全盛期に
足し算のアプローチで利用者の積み上げをとらえる
プラス思考と足し算のアプローチは異なる
BMC(ビジネスモデルキャンバス)を用いた人材活用とは
ケアプランでは本人の目標を優先する
認知行動療法で利用者の行動をモニタリング
老若男女が入り交じるデイサービス
「ホーム」は利用者同士の心のよりどころ
最後の瞬間を話し合う「人生会議」
利用者の笑顔が周りを幸せにする
[第3章]ここが変だよ人材編
介護職員ですべての利用者を支えようとするから、常に人が足りない
“利用者同士が支え合う”仕組みを構築すれば、人材不足は解消する
目の前の人財が見えませんか?
お世話「する人」と「される人」に分けるから人手不足になる
利用者は人財の宝庫という事実
利用者の背後に多くの人脈がある
デイに通うために頑張る利用者
誰もが働ける環境づくり
分業することで専門性を高める
できる人ができることを・ないものはつくる
利用者を正規職員に登用するケースもある
働き手の心を掌握する2つのテクニック
人を頼れば、何もかも上手く回る
人が集まるところには、ボランティアも集まる
人と人とをつなぐ「くげぬまつながり隊」
顔見知りになることで人は優しくなる
ボランティア自身がボランティアを定着させる
最低人員の基準がなければ職員は不要
利用者こそが施設に不可欠
[第4章]ここが変だよ経営編
平均利益率3%、「介護福祉は儲からない」のが当たり前
理念の浸透も利益の追求もしない“逆転の発想”で利益率15%を実現する
利用者の声を聴き、夢をかたちに
食事会を催して人を巻き込む
仲間同士で苦難の状況を乗り越える
夢を共有する者同士でイベント立案
集めるのではなく、人が自然に集まる場をつくる
食べたいパンを作って、さとふるパン部門全国1位
人は施設ではなく、パン屋に集まる
アリがたい法でボランティアのモチベーションを保つ
人の声に耳を傾けると自然と事業が広がっていく
数週間で事業が立ち上がる「ごちゃまぜ放置法」
チラシを作成することで企画を固めていく「ばらチラシ法」
他人を持ち上げて丸投げする「盛り上げバックレ法」
サービス内容ではなく、ディーセント・ハピネスが大事
イベントのトラブルは日常茶飯事
法的トラブルを防ぐ手立てとは
八方よしの経営スタイル
おたがいさまには、返報性の原理がある
[第5章]ここが変だよ制度編
支えすぎるのは介護保険制度の仕組みが根本原因
介護保険に頼らない事業者になることが真の自立につながる
民間のアイデア活用を提言
地域に根差した介護施設の重要性が増している
地域内にはさまざまな資源がある
ケアマネのやりがいを生む制度改革を
縦割り行政がAI時代で変化する
若年性認知症を発症したサラリーマンの行く末とは
AIの浸透で介護の専門家は不要になる?
認知症基本法で患者の尊厳は保たれるか
認知症患者のイメージ向上には地域の啓発活動が不可欠
認知症新時代における備えとは
ここが変から、変化の時代に
[第6章]「支える側」と「支えられる側」ではなく、
“お互い様”の精神に立ち返ることが事業者と利用者の幸せにつながる
タイの山岳民族の暮らしから
平和に必要なのは「おたがいさま」
利他性は顔見知りから
日本の福祉施設にはない宗教室
ともに必要とする社会の創設を目指して「共必社会」
福メンプロジェクト
おわりに



