内容説明
日本社会において陰謀論と排外主義を内包する政治運動が急速に拡大している。
2020年の米大統領選前後に始まった反ワクチン系運動は、レイシズムや極端なナショナリズムを伴いながら国内で定着し、2024年には1万人規模のデモが複数回開催されるなど、その勢力は可視化された。それ以降も、それまでデモに縁がなかったような層が、「財務省反対デモ」など陰謀論ベースのデモを行っている。
その陰謀論界隈に、外国人差別を訴える排外主義が合流し始めて、急速にその勢力を強めている。
なぜこんなことになったのか? この現象はどうした結果を招くのか?
本書は、そうした陰謀論デモや排外主義の現場で取材を続けていた執筆陣を招聘。それぞれの視点から、この現象を「陰謀論ブーム」、「排外主義ブーム」として捉え、特定の政党に留まらない、より広範な現象として多角的に分析。地方議会を舞台にした極右系団体の本格参入、泡沫候補の演説に見る“共闘”や排外主張の流行、さらには「財務省解体」など反グローバリズムを掲げる新勢力の台頭に至るまで、現場取材を通じて浮かび上がった実態を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
59
7人の所謂「ウォッチャー」や反レイシズムの活動を行ってきた人たちによる著作。7つの多方面な角度から「陰謀論」や「排外主義」の現状に迫っていく。陰謀論は、例えばディープステートや闇の勢力が、この社会を操っているというようなものであり、一部のコアな支持者によって信じられてきたマニアックなものだった。それが、ここに来て移民や日本在住の外国籍の人たちを排除しようとする「排外主義」と結びつくことによって、陰謀論による排外主義を生み出し、それが大きな流れを生み出しつつあることに、執筆陣は危惧を抱いている。2025/12/12
秋 眉雄
28
頭がくらくらする一冊。『もはや誰も彼もが日の丸を持ち、日の丸の下でめいめい思い思いのことを主張していると表現したほうが事態を正確に表現できるかもしれない。それほどまでに、どんな現場にも日の丸が溢れている。』『在日陰謀論が高じて、排外主義を通り越し、国家規模の自爆を目指してしまっている。』これ、放っといたらとんでもなくマズい事になると思います。いま読むべき一冊。2025/12/16
ドラマチックガス
27
反レイシズム、反カルト、反排外主義を訴え続けるネット界隈の有名人7人がそれぞれの得意分野から現在の陰謀論・排外主義を読み解く。共通するのは参政党現象への言及と、某戸田市議。参政党はネットを駆使して台頭したと思われているけれど、意外と堅実な選挙戦をやっているという指摘は重い。またちだいさんの、地方議会をきちんと追っていないからその辺の変化に気づけなかったという指摘も。2025年末に読んでおきたい本だと思う。毎年、その年の陰謀論と排外主義をまとめて、出す必要がなくなるその日まで出し続けてほしい。2025/12/09
どら猫さとっち
25
民主主義を揺るがす陰謀論、そして今年になって沸き起こった排外主義。しかし、それらは今に始まったことじゃない。東日本大震災、そしてコロナ禍からじわじわとその兆候は見られた。反コロナワクチンからヘイトスピーチ、カルト政党と、主にネット世論で蔓延し、物議を醸すことは数多くある。その正体とは何か?今だからこそ読んでおきたい、7人の論者がそれぞれの視点で斬る警告の書。このまま突き進めば絶望しかないこの社会、本書を読み現実と向き合うこと、考えること。それが希望の第一歩になるはずだ。2025/11/29
Kooheysan
18
主に2020年のコロナ禍(残念ながらやはり歴史の重大転換点の1つ)以降の出来事を丁寧に俯瞰しながら、陰謀論が排外主義と結びついて今の日本に病理のように巣くっている様を理解できるようになっています。そして、奇妙な連帯意識の原因や、なぜ運動が日の丸という象徴に結びつくのかも…。現在の状況の整理に非常に役に立つので、この話題に関心のある方には強くお勧めします。2025/12/01




