内容説明
中国東北部発世界文学行き。
中国現代工業の一大拠点だった瀋陽市鉄西区は、90年代の改革開放の波に乗れず経営破綻が相次いだ。地元出身の著者が土地に息づく5つの物語を掬った初の邦訳短編集。新文芸誌「GOAT meets」掲載で大反響!
文革の記憶を引き摺る家族と、工場にリストラされた父娘。
連続殺人事件を機に運命は交わる。(「平原のモーセ」)
貧民街に暮らす少年はある日、非行少女と石炭工場に忍び込む。(「グラードを出る」)
その冬、僕は父と離れて街外れの教会に住む叔母のもとへ向かった。(「光明堂」)
亡き父の言葉を残し、伯父は闇夜に飛び立った。(「飛行家」)
小説家は、他人の未発表原稿に、自分しか知らぬはずの真実を見た。(「北方は無に帰す」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
78
五つの短編から成る作品集。状況と言動をきびきび描写し、リアリズムの小説と思って読み始めたが、どの作品も後半で不思議な幻想が顔を出し、村上春樹風味を狙っているのかなと思った。著者の双雪濤さんは1983年生まれ、改革開放が始まってからの生まれだが、両親または祖父母の世代が辛酸を舐めた文革、もっと遡って日本軍、国共内戦の傷跡が作品のここかしこに現れる。幻想は厳しすぎる現実を乗り越え作品として結実させる力なのだろうか。傷ついた親に育てられる子ども、死んだり姿をくらましたりの親の子ども、子どもの孤独が印象に残る。2026/05/25
ヘラジカ
37
まるで長篇小説かと錯覚するような密度。特に表題作。あの登場人物の数が動くヒューマン・ドラマを、僅か100頁に満たない短さでなんとも鮮やかに纏め上げているのだ。舌を巻いた。暗いトーンの純文テイストではあるが、中国の暗い時代とそこに生きる人々の情念が混淆して生み出されたミステリー小説の佳品でもある。一篇一篇の満足感が並外れた短篇集。これからも要注目の作家だ。2026/02/04
えりまき
18
2026(69)連作短編集。平原のモーセ/グラードを出る/光明堂/飛行家/北方は無に帰す。中国内の政治や日本との関係。大久保洋子さんの翻訳はとても読みやすいけど、登場人物の3文字の漢字氏名がなかなか覚えられなくて、時間をかけてやっとの読了。 2026/03/15
taku
16
喧騒や誇張がなく、妙なパワーを押し出してこないから読んでいて疲れない中国文学。寂れた街を舞台に、断片的にノスタルジーを紡いでいる地味なイメージだけど、余白から受け取れるものは控え目じゃない。表題作は読み返した。それぞれの過去や関係がわかっていたら、見える景色も違って一層味わい深くなる。そんな小説はいいなと素直に思えた。他の4編だけなら悪くない短編集までだったはず。ドラマも観てみたい。2026/03/11
kibita
14
雪と煤煙に覆われた灰色の世界のイメージが浮かぶ。親世代には文革の影が残り、父親の喪失や不在を抱えた子供たちが、荒涼とした工業地帯にある艶粉街をどこまでも歩いていくようだった。『グラードを出る』では石炭を拾い、『光明堂』では艶粉街を横断し、子供たちは驚くほど遠くまで行く。その感覚は芥川の『トロッコ』をずっとシビアにしたようだった。『飛行家』では「風船おじさん」を思い出した。現実には無謀で、たぶんうまくいかない。それでも空を目指す姿にはどこか希望の明るさがある。2026/06/06
-
- 電子書籍
- 終端街の昇降機守(3) COMICエト…
-
- 電子書籍
- 月刊タウン情報もんみや 2021年2月号
-
- 電子書籍
- 見えない叫び
-
- 電子書籍
- OZplus 2015年7月号 No.…
-
- 電子書籍
- ある華族の昭和史 上流社会の明暗を見た…




