平原のモーセ

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平原のモーセ

  • ISBN:9784093567640

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内容説明

中国東北部発世界文学行き。

中国現代工業の一大拠点だった瀋陽市鉄西区は、90年代の改革開放の波に乗れず経営破綻が相次いだ。地元出身の著者が土地に息づく5つの物語を掬った初の邦訳短編集。新文芸誌「GOAT meets」掲載で大反響!

文革の記憶を引き摺る家族と、工場にリストラされた父娘。
連続殺人事件を機に運命は交わる。(「平原のモーセ」)

貧民街に暮らす少年はある日、非行少女と石炭工場に忍び込む。(「グラードを出る」)

その冬、僕は父と離れて街外れの教会に住む叔母のもとへ向かった。(「光明堂」)

亡き父の言葉を残し、伯父は闇夜に飛び立った。(「飛行家」)

小説家は、他人の未発表原稿に、自分しか知らぬはずの真実を見た。(「北方は無に帰す」)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

たま

79
五つの短編から成る作品集。状況と言動をきびきび描写し、リアリズムの小説と思って読み始めたが、どの作品も後半で不思議な幻想が顔を出し、村上春樹風味を狙っているのかなと思った。著者の双雪濤さんは1983年生まれ、改革開放が始まってからの生まれだが、両親または祖父母の世代が辛酸を舐めた文革、もっと遡って日本軍、国共内戦の傷跡が作品のここかしこに現れる。幻想は厳しすぎる現実を乗り越え作品として結実させる力なのだろうか。傷ついた親に育てられる子ども、死んだり姿をくらましたりの親の子ども、子どもの孤独が印象に残る。2026/05/25

NAO

50
登場人物たちの父親には、下放で送り込まれた者がいた。頑張って働き党の指導を受けて工場の指導者となったが体制が変わって弾圧を受けた者がいた。働いていた工場からリストラされた者がいた。登場人物たちは、貧しいだけでなく、父親不在の状態にある。そして、自分たちの立ち位置が分からずにいる。下放されても、リストラされても、父親たちにはかつてちゃんとした立ち位置があった。本を読み、自分なりの考えを持つことの大切さを信じることができていた(その後自殺したものもいたが)。2026/06/23

ヘラジカ

37
まるで長篇小説かと錯覚するような密度。特に表題作。あの登場人物の数が動くヒューマン・ドラマを、僅か100頁に満たない短さでなんとも鮮やかに纏め上げているのだ。舌を巻いた。暗いトーンの純文テイストではあるが、中国の暗い時代とそこに生きる人々の情念が混淆して生み出されたミステリー小説の佳品でもある。一篇一篇の満足感が並外れた短篇集。これからも要注目の作家だ。2026/02/04

りつこ

31
読み友さんの感想を読んで手に取った本だったんだけど、とても面白かった。読めて良かった。 かつては栄え、その後工場閉鎖などで貧しさに喘ぐ町・艶粉街を舞台に、そこに住む人の生活や人生を描いた5編が収められている。 文革の消えない記憶、持つ者と持たざる者の格差、親に棄てられて寄る辺ない子ども。 中編とは思えない年代記もあり、ミステリーの要素もあり…芳醇なストーリーに長編を読んだような満足感があった。 巨大な流れに翻弄され、逆境に次ぐ逆境になぎ倒されながらも、それぞれの人生を必死に生きようとする姿に胸打たれた。2026/07/03

ori

18
面白かった!5編の短編でちょっとずつ登場人物が重なっていくのも好み。そして最後に出てきた人になるほどー!そうきたかと構成も面白い。「平原のモーセ」は殺人事件の謎解きをドキドキ読み進めていたら思いがけずの切なさに最後に泣く。ミステリーで泣かされるとは。少しずつのボタンの掛け違いが望まない道へと押しやる。日々の生活に苦しむ人ほどその道に押しやられやすい。厳しい冬、冬の曇色の空、練炭のにおい。近そうで遠い都会。そんな中国東北の空気感が漂ってきた。この作家さんはこれからも読みたいなー。2026/06/07

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