内容説明
『ほんのささやかなこと』著者が描く、ある少女のひと夏
赤ちゃんが生まれるまで、ひと夏の間、親戚の家に預けられた少女。怒らず優しく接してくれる親戚との生活は初めて知る愛に満ちていた。だがこの夏もやがて終わりの時が――映画「コット、はじまりの夏」原作。感情の深みを驚くほど静かに描き出す著者の代表作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
94
アイルランドの田舎村、実家の都合でひと夏を親戚の家で過ごすことになった少女の物語。時代は80年代頃か。青い空からの陽射し、むっとする臭いのそよ風、自然を肌で感じさせる語りに包まれながら、日々戸惑いつつ自らへの意識を認めていくリアルな姿を心に刻んでいった。構って貰えない大家族の場と明確な情愛を注がれる一人っ子の場の違いは彼女を変える。最初はぎこちなかったおじさんの深い愛情とおばさんの純粋で素直なオープンさが自分と他者を慮る心を芽生えさせた。最後の呼び掛けは少年の心が重なったものだろうか。密やかな余韻が残る。2025/12/06
はる
50
とても好みの作品でした。アイルランドの片田舎。大家族の中で暮らす少女は、親戚夫婦の家に預けられることに。そこで少女が経験するのは今までにない優しい世界…。短い物語ですが、心の機微を繊細に描いた文章に引き込まれます。はっきりと描かず、読者の判断に委ねているのがいいんですよね。ラストも胸熱でした。2025/12/25
ヘラジカ
38
とても短い作品なので、折角だから高い評価を受けた映画版と比較しながら読んだ。勿論小説を先に読んでいて、しかも珍しいくらい台詞やストーリーラインが原作に忠実な作品なのに、それでも終盤は思わず涙してしまう程に感動した。原作の持つ寡黙さを再現しながらも、 ”黙して語らない”世界を美しい映像によって拡大している。限られた空間を撮影の舞台としながらもコット(原作では無もなき語り手)は、あの環境に投げ込まれ人生が大きく拓けたことを端正に表現している。どちらもいい作品だが、映画版の方が断然好きだと感じる稀有な例だ。2025/11/04
ベル@bell-zou
26
玄関と郵便箱の間のタイムトライアル。ひと夏の何気ない日々の他愛のないゲーム。それがラストシーンで鮮やかにきらめき駆け抜けていくよう。なぜ少女は預けられることになったのか、この夫婦の背景に一体何があるのか。大人だけが解する事情。多くが語られないことはそのまま少女の立場であり読み手への謎でもある。それが少しずつ明らかになっていくにつれ少女の心も強く育まれていく。キンセラ夫妻へ向けられる好奇と悪意にも揺るがないほどに。観逃してしまった映画『コット、はじまりの夏』原作だったとは。短いながら心に残るであろう物語。2025/12/21
kibita
15
映画「コット、はじまりの夏」の原作。簡潔な文体の中に濃密な情感を宿し、主人公が駆けていくラストの疾走感と、宛先を示さない最後の台詞によって、読者に強烈な余韻と高揚を残す。この短さでこれは。2025/11/17
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