疫病の世界史(上)――黒死病・ナポレオン戦争・顕微鏡

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疫病の世界史(上)――黒死病・ナポレオン戦争・顕微鏡

  • ISBN:9784750352671

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内容説明

この歴史の果てに、私たちの今がある。

疫病は人間社会の実像を映し出す鏡だ。それは個々の生を揺るがし、宗教への懐疑や哲学の刷新を促してきた。上巻ではペスト、天然痘、コレラなどの流行の実態と、ある「英雄」の見込み違いが招いた惨事、そして細菌の発見がもたらした劇的な転機を描く。

ペストからコレラまで〈古代~近代〉

目次

まえがき
新版まえがき
第1章 はじめに
第2章 体液理論による医学――ヒポクラテスとガレノスの遺産
病気は神の業である
病気は悪霊の仕業である
ヒポクラテスの革新
体液理論の医学哲学
ガレノスとテキスト偏重
体液理論の残したもの
神殿医療
まとめ
第3章 ペスト、三度のパンデミック――五四一年~一九五〇年ごろ
ペストと公衆衛生
ペストの影響
三度のパンデミック
第4章 ペストという病気
ペストの病因
症状と治療
ペストの病型
まとめ
第5章 ペストへの対応
市民の自発的な対応
公衆衛生対策
評価
第6章 エドワード・ジェンナー以前の天然痘
感染症を比較する
ウイルス性疾患
伝播
症状
治療
第7章 天然痘の歴史への影響
ヨーロッパの天然痘
アメリカの天然痘
天然痘と公衆衛生
第8章 戦争と疾病1――ナポレオンと黄熱とハイチ革命
サン・ドマング
「苦い砂糖」
社会の緊張
奴隷反乱と黒いスパルタクス
奴隷制回復をねらうナポレオンの戦い
フランス軍の壊滅
まとめ
第9章 戦争と疾病2――一八一二年のロシア、ナポレオンと赤痢と発疹チフス
ニエーメン渡河
ロシアの奥へ
赤痢
ボロジノの戦い
モスクワで
敗走
発疹チフス
まとめ
第10章 パリ臨床学派
体液病理説の危機――パラケルスス
正統医学への科学からの異論
パリの知識革命の背景
パリ病院学派の活動
第11章 衛生改革運動
パリの衛生学
エドウィン・チャドウィックと救貧法改正
病気の不衛生環境説――トマス・サウスウッド・スミス
衛生報告書(一八四二年)
衛生改革運動
衛生設備の健康への効果
衛生思想と芸術
衛生観念の高まりが公衆衛生に残したもの
第12章 細菌病原説
思想と組織の基盤――パリの病院医学からドイツの研究室医学へ
技術の基盤――顕微鏡と「アニマルクル」
著名な三人――パスツール、コッホ、リスター
「研究室医学」と専門職としての医師
細菌説の家庭生活への影響
まとめ
第13章 コレラ
病因、症状、芸術への影響
治療
疫学とナポリの例
コレラの恐怖――社会の緊張と階級対立
公衆衛生とコレラ――都市の改造
新たな生物型(バイオタイプ)――エルトール型コレラ菌
第七次パンデミックの発生
リタ・コルウェルとコレラの環境病原巣の発見
ペルーにおける現代のコレラ
二〇一〇年以降のハイチ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

110
人類の歴史は疫病との戦いの連続だった。ペストや天然痘で多大な犠牲を払って、ようやく医療と公衆衛生という武器が手に入った。しかし今度はその武器の使い方がわからなかったり、ナポレオンのように政治や戦争を優先したため死者は増える一方だった。これに人口集中と格差拡大が加わって疫病が貧困層を直撃したが、科学者の奮闘と技術の発展でワクチン開発など希望が見えてきた。しかし今度は科学の正しさを理解できない大衆が救いの手を拒むなど、人と人との戦いに変質していく。救いようのない愚かさもまた、人にとり憑いた疫病なのか。(続く)2022/03/10

やいっち

97
パスツゥールやコッホ、リスター等に絡む本や微生物の狩人等を改めて纏めて学習し直しているような。研究者らのドラマ満載。面白い。フランス革命やナポレオンについての記述が興味深い。フランス革命はフランス本土だけで起きていたんじゃない、植民地での黒人などの有色人種らの奴隷制からの解放運動でもあった(こんなことは教科書には書いてない)。が、ロベスピエールらが粛清され、ナポレオンの反動政治が始まる。彼には植民地の利権が必須だった。奴隷制は断固死守。彼らの勝利は明らかだった…………2022/01/09

ブラックジャケット

15
コロナウィルスのパンデミックを経験すると、否が応でも過去の疫病の歴史が気になる。かっこうのタイミングで上下巻の大著が発表され、手に取る。専門家の著述だが、思いの外読みやすい。ヒポクラテスの世界観から、中世のペスト大流行へ。世界の経済成長が人流を活性化させ、感染のターミナルとなる都市を生み出す。戦争も大感染源となり、ナポレオンは感染病で敗れ去る。顕微鏡が発明され、パストゥールやコッホがついに病原体となる細菌を特定した。天然痘のワクチンが開発され、人類は感染症に武器を持つ。ナポリのコレラ感染は地獄。下巻へ。 2022/02/03

TI

7
この手の本によくある病気とそれについてだれが治療したかなどの話より病気が社会に与えた影響などについて書いてある。特にフランスのハイチでの戦いやロシア遠征について戦いよりも病気に負けたといった感じでの話が多い。なかなか新鮮であった。2025/04/28

ゼロ投資大学

5
新型コロナウイルスの発生により、これまでに起こった疫病に改めて注目が集まっている。ペストをはじめとした歴史上の大きな転換点となった疫病を深掘りして解説している。公衆衛生の概念が出来てきてから感染症が広まる土壌は大きく改善したように思う。2022/05/15

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