内容説明
近未来。野生の象は絶滅し、シベリアには遺伝子工学で復活したマンモスの保護区が創設されていた。かつて象を保護する生物学者だったダミラは死後一世紀を経て、その意識を一頭のマンモスに転送し、群れを率いる存在となる。一方、保護区には、マンモスを狙う密猟者の息子で広い世界を夢見る少年スヴャトスラフや、大金を積んで合法的にマンモス狩りの権利を得た富豪の夫で、狩りに疑問を覚えるウラジーミルらが集まりつつあった――大自然と人間の相剋をSFならではの視点で描ききった俊英のヒューゴー賞受賞、ネビュラ賞・ローカス賞候補作。/解説=勝山海百合
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
37
野生の象が絶滅している近未来の社会を舞台にしたSF。マンモスだけはシベリアで復活しており、牙を狙った密猟者が跋扈しています。主人公の一人ダミラは殺されてしまいますが、最新のテクノロジーの恩恵を受けて、彼女の意識がマンモスに転送されます。200ページ程度の短い小説ですが、様々な要素が絡み合った忘れがたい作品に仕上がっています。特にマンモスと一つになったダミラの意識の変容が面白いです。過去のことを思い出して、内省的になったりします。密漁者である同性愛のカップルの葛藤も巧みに描かれています。ヒューゴー賞受賞作。2025/10/14
iwtn_
1
SFが読みたくなり、書店で新刊として並んでいたので購入。設定に興味を引かれたのもある。象の脳に人間の意識をダウンロード?インストール?できるのか?そしてそれは機能するのか?みたいな問題はあるが、それはSFなので大丈夫。物語としては中編ということで短く、サクッと興味深く読めた。近未来のガジェットも、あまり高度なものでなく馴染んでいる。自分にはあまり共感できる登場人物がいなかった。象牙という素材は、猟で殺すのではなく死骸からの回収とかでなんとかならないものか。富の顕示は様々な問題を引き起こすな、と思った。2025/10/13