内容説明
第32回松本清張賞受賞作 異形の歴史小説
玉照院の師弟は“やんごとなき秘密”を抱えていた――
天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。
歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
241
今年の松本清張賞受賞作という事で読みました。比叡山延暦寺を舞台とした飯伏銀の物語、千日回峰行を巡る生と死の愛憎劇、歴史小説にしてミステリアス、松本清張の二大要素を融合させた受賞も納得の秀作です。今年のBEST20候補としました。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639201462025/10/21
パトラッシュ
190
先日YouTubeで酒井雄哉師の千日回峰行の動画を見た。極限まで肉体を痛めつけた末に悟りを求める苛酷な修行だが、相当な覚悟と意志がなければ達成し得ない。その壮絶な行に失敗即死が当然だった江戸時代に挑んだ2人の僧を描く本書は、通常の歴史小説にはない無限の哀しさに満ちている。いずれも天皇の血を享けたが故に叡山に押し込められた彼らが自らの生きた証を刻み込もうと命を賭ける姿は、生まれた意味を追求する人の業が最高の美しさを示す瞬間なのだから。権力者や殺人者の愚行を目にする度に、魂を鍛えようと願う心を考えさせられる。2025/10/03
trazom
151
名前も知らない作家の小説だが、比叡山の千日回峰行というユニークなモチーフに惹かれて手にした。出自に対する悩みを抱えた主人公の師弟が、ともに、千日回峰行に挑戦して阿闍梨になることによってのみ、自らの尊厳を確保できるというその切羽詰まった心情が迫ってくる。千日回峰行という高度に宗教的な出来事であっても、そこにあるのは、自らの存在意義を主張したいという人の情念であり我執であることを思い知らされる。白鷺(はくろ)とは、白い麻の浄衣を身に纏い山道を跳ぶように歩く千日回峰行者を指す比喩だという。いいタイトルだと思う。2025/11/15
hiace9000
124
延暦寺で千年の歴史を刻む苦行「千日回峰行」。満ずれば大阿闍梨の称号を得、失すれば死を免れぬと云う。白鷺(はくろ)とは行に挑む真白の浄衣に身を包んだ僧の姿。出自に秘密を抱えた僧・恃照が、故あって預かった面倒で厄介な弟子・戒閻。数奇な運命に縛られた両者の反目は、合わせ鏡のようでもあり同族嫌悪とも呼べる。互いの嫌悪は須らく憎悪へと転じ、自らの存在を確かめる命を賭した修行に身を投じることに。両者の独善と業火に焼かれるような怨嗟の果てに見えたものとは―。現から離れた叡山の行を静謐で濃密な筆致で描いた松本清張賞作品。2025/10/02
ヒロ
100
比叡山の僧侶の話という事で、ちょっと難しい時代劇なのかなと思いましたが全然違って、とにかく人間の熱というかエネルギーを全力でぶつけられた気がしました。千日回峰行という厳しい修行を通じて二人の僧侶の熱い想いや生き様が表現されていて、読んでいてこちらも熱くなりました。何という精神力なのかと思わされる場面はいくつもあり、それであって恃照や戒閻のとても人間らしい部分も読んでいて面白かったです。2026/01/02
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