内容説明
〈教団(オルデン)〉創立家に生まれつきながら一族の残虐さに反発し不審死を遂げた母ロサリオ、霊媒行為が心臓疾患を悪化させ死を迎えた父フアン。両親を失ったガスパルは、父が隠してきた闇の向こう側の存在を知り、避け続けてきた〈教団〉と相まみえることを決意する――。独裁政権時代から九〇年代までのアルゼンチン史をも呑み込み、ジャンルを超えてラテンアメリカ文学界を席巻した闇の一大叙事詩!(解説・杉江松恋)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
59
闇の力を呼び出し利用するカルト教団。生贄を捧げ、霊媒を介して行われる謎の儀式。幼い頃に教団に見出され霊媒とされた男性が力を受け継いでしまった息子を教団から守ろうとする戦いの日々。自分の死期を悟った父親の覚悟が切ない、圧倒的な狂気と家族愛が錯綜する南米ホラー。教団に逆らった者は身内であろうと粛清されていく恐怖。更に異界と現実の境目があいまいになり、幻想と血と暴力が世界を満たし、何が正しいのかもはやわからない闇に呑まれていく…。訳のせいなのかページ構成なのか、全体的に読みにくく感じてしまったのが残念だった。2025/12/01
あたびー
40
読むのが辛かった。読みづらいとかつまらないとかいうのではなく、物語があまりにも辛かったのです。自らの欲求の為には自分の娘をも犠牲にして構わないという輩が、娘婿や孫を利用することに何のためらいがありましょうか。父フアンは何とかして息子ガスパルを教団から守ろうと印をつけましたが、息子は友人と共に向こう側に触れた体験から心を病み苦しみます。そして根源を探るため祖父母に会おうとした矢先、教団はガスパルの愛する者たちに魔の手を伸ばしてきます。もちろん今年最高のホラーですが、それ以上に辛い物語でした。2025/12/17
ヘラジカ
40
ダーク・ファンタジーと言うにはあまりにも重く、禍々しい。単なるホラー映画かと思って観たロバート・エガースの『ウィッチ』を思い出した。生物の根源に拘わる原始的な恐怖と、克服するために人々が生み出した宗教は、それ自体が実際のものとして身近にあることから、この作品で描かれている邪教にも妙な説得力がある。南米の混沌とした歴史が土台にあることも物語に重厚感を与えていた。但し小説として見るならば、下巻の前半までは文句なしに面白かったものの、後半には中弛みが出来て終盤もやや拍子抜けの印象。全体の緻密さには唸らされた。2025/10/02
Shun
27
父から子へ受け継がれる超自然的な力。闇の力を巡り長年霊媒として利用されてきた男は、我が子を教団から遠ざけ一族に見つからないよう特殊な秘儀を用いる選択を決断する。余命僅かの男は切羽詰まった末の行為か、それとも暗い一族の秘密に近寄らせない為の愛ある行動か、その後の父と子の関係を大きく変えてしまった。後半では視点が子に移り、少年時代の不可解なある事件とその後の教団と再び対立する場面が描かれる。”闇”の力が関係する怖ろしい儀式と世界の裏で暗躍する組織と我が父の関係を知った子の物語、そして不器用な父の愛が胸を刺す。2025/11/02
わたなべよしお
22
幾人かの評論家が激賞しているけど、それほどかな。下巻は上巻よりは面白くなる。糸が解けていくように謎や事情が分かってくるのは心地よさがある。だが、私は特に感動しなかった。ホラーとしても、それほど楽しめなかったし、凝った構成はわかりにくさを増していただけのような気もする。ラストも爽快感を味わえるほどではなかった。勿論、そんな酷い作品ではないけどね。あまりに褒める人がいるから、ちょっと反発してしまったかも。2025/11/22
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