不平等・所得格差の経済学――ケネー、アダム・スミスからピケティまで

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不平等・所得格差の経済学――ケネー、アダム・スミスからピケティまで

  • ISBN:9784750358741

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内容説明

高名な経済学者である著者が、経済的不平等・所得格差の思想について、過去2世紀以上にわたる進化をたどる。ケネー、アダム・スミス、マルクスからピケティに至る経済学者たちの考え方を概括し、歴史的視点による今日の不平等の捉え方を問う重要な著作。

目次

プロローグ
第1章 フランソワ・ケネー――「豊かな農業王国」の社会階級
ケネーの時代のフランスの不平等
社会階級とその収入源
剰余の重要性
第2章 アダム・スミス――「豊かさへの道筋」と暗示的な所得分配理論
アダム・スミスの時代のイングランドおよびスコットランドの不平等
スミス、リカード、マルクスにおける社会階級
繁栄する社会とは
『道徳感情論』と『国富論』での富裕層への態度
富者の所得の正当性を疑う
社会が発展するなかでの賃金、地代、資本収益
進歩した社会の実質賃金と相対賃金
暗示的な所得分配理論と資本家への不信
結論
第3章 デヴィッド・リカード――平等と効率のトレードオフは存在しない
ナポレオン戦争時のイングランドの所得不平等
所得分配と経済成長
賃金、利潤、地代の進化
階級闘争
リカードの「思わぬプレゼント」
第4章 カール・マルクス――利潤率は下がっても労働所得への圧力は変わらない
カール・マルクスの時代のイギリスおよびドイツの富と所得の不平等
下準備――マルクス主義の鍵となる概念を整理する
階級構造
労働と賃金
資本と利潤率の傾向的低下
不平等の進化についてのマルクスの大局的な見方――ふつうに思われているより明るい
パレートへ、そして個人間の所得不平等へ
補論――グラッドストーン引用騒動
第5章 ヴィルフレド・パレート――階級から個人へ
20世紀初め頃のフランスの不平等
パレートの法則と社会主義に適用された「エリートの周流」
パレートの法則か、パレートの「法則」か、それともそもそも法則ではないのか
パレートの貢献
第6章 サイモン・クズネッツ――近代化の時期の不平等
20世紀半ばのアメリカ合衆国の不平等
クズネッツ仮説の定義
曲線の定義は早すぎたのか
復活の可能性
クズネッツの貢献
この本で検討した著者全員の地域性と普遍性
第7章 冷戦期――不平等研究の暗黒時代
資本の私的所有のない体制――社会主義市場経済での不平等
資本の国家所有という体制――計画経済での不平等
社会主義での所得不平等研究の少なさ
進んだ資本主義の下での所得不平等の研究
崩壊の理由
所得分配への新古典派的アプローチの批判
資本主義の下での不平等研究の3タイプ
国家間の不平等と国内不平等を結びつける
エピローグ――新しい始まり
謝辞
解説[梶谷懐]
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

1.3manen

50
O図書館。不平等のナラティブ:特定の力の相互作用を通じて所得分配が形成される道筋を語るときの、記述の仕方(17頁)。理論はナラティブの論理的足場を強化する。ナラティブや理論の主張を生み出したり、支え、切り崩し、修正するデータをもってくるには実証が必要(17頁)。本書の目的:時代と場所に特異的な特徴を解きほぐし、読者に、自信の不平等観がいかに社会の重要な特徴に影響されているかを理解してもらうこと(36頁)。2025/07/23

sayan

24
賃上げ額以上に物価額は上がり続け、死に様語り生き様語れず。巷には「必要と語られるのになぜ賃金に反映されないのか」「必要かどうかではない、報酬に値する語りを持てたか」「不平等はいつの時代にも語られてきた」、ジェンダー・多世代・非/正規間の線引きは無数にあるが語りが交わることはない。怒りはSNSに漂い、政策は数値に変わるも、現実の生活状況は変わらない。ピケティはr>gと告げる。資本なき者が声を上げても、それはやがて格差を肯定する“理屈”として返ってくる。本書はその回路の静かな暴力を丁寧に書き記し無機質に示す。2025/05/02

Kai Kajitani

9
こちらのページにこの著作についての詳しい紹介があります。https://book.asahi.com/jinbun/article/156037122025/02/19

Yuki2018

8
本書で最も面白かったのは冷戦期の経済学批判。共産/社会主義・資本主義両陣営の競争下、経済学はどちらの陣営でもイデオロギーに奉仕した。前者における政治的イデオロギーや権力による制約は理解に固くないが、問題は後者。その根本原因は「政治的で右翼的な研究資金提供」だ。この時期の経済学は億万長者の金で下支えされた「冷戦経済学」と呼んだ方が新古典派等と呼ぶより的確に本質を表しているという。21世紀に入り、特に金融危機後、不平等の問題がクローズアップされている。今後、現実を踏まえた経済学研究が進むことを期待したい。2025/04/29

ゼロ投資大学

3
人類の歴史の中で、現在ほど所得格差が拡大した時代も珍しい。一部の大富豪が世界の富の大半を所有し、多くの貧しい人々は苦しい生活を余儀なくされている。不平等を解消する方法は議論が続けられているものの、メリット・デメリットがあり、現実的な手段は限られる。2025/03/08

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