内容説明
建物と対話をし、そこに住む人びとの知り得ぬ事柄を聞くことができる“家読み”のシガは、ある惑星で行き場を失ったクローンのナガノと出逢う。ともに旅をすることになった二人は、互いの存在を通して世界の豊かな一面を知っていく(「とても寒い星で」)。“塔の中”と呼ばれる特権階級の官吏でありつつ世間に違和感を覚える「私」は、家出中の若者を助けたことから新たな生きる意味を獲得する(「シールの素晴らしいアイデア」)。四篇収録の単行本に、文庫化に際して新作二篇を追加して贈る、歌人でもある著者の類い稀な言語感覚で描かれる超未来のハートウォーミング・ストーリーズ。/【目次】とても寒い星で/徐華のわかれ/シールの素晴らしいアイデア/銀河ボタン/二人という旅/CLONEHOOD DREAMS 1 この星の皆(みんな)があなたと/解説=泉谷瞬
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mayu
27
家と対話する事ができる"家読み"のシガと労働クローンのナガノの2人の話が印象的な短編集。刺すような寒さの中にある澄んだ空気がずっと漂っている様な全体的に透明感を感じる世界観。世間のさまざまな事に捕らわれているのに心は捕らわれず自由な人達のそれぞれの愛が描かれていた。そこには性別も年齢も個体も関係無い。互いに相手を必要としている唯一無二の愛。どの話にも共通して出てくる黒スープを飲んでみたいなぁ。役に立とうと必死なナガノに向けた生きているだけでいいというシバの言葉がすべてを物語っているなぁと感じた一冊。2026/02/25
遙
15
文庫化をとても楽しみにしていた一冊。自由で美しい愛の物語は、旅の過程から人物達が紡ぐ言葉の一つ一つも美しい。 [シールの素晴らしいアイディア]のシールがとても可愛い。 彼らはI型とII型という性を周期的に移り変わっている。 恐らく性別の事だと思うのだけど、そういう型にハマった書き方をしない。その世界独自の呼び名があって、飽くまでも私たちの現実とはまた違う意味合いなのだ。 [緑と盾 ハイスクールデイズ]で知ったこの著者さん。 現在だとこの方の昔の作品は手に取りにくいので、更なる文庫化を心待ちにしたいです。2025/10/11
クレイン
13
家の声が聞こえるシガとアンドロイドのナガノのお話がメインの短編集。 時間がゆっくりと進みつつも温かい会話がテンポよく繰り返される。 季節的には冬、そしえ非常に寒いエリアのように見えるが、登場人物たちの掛け合いは非常に温かい。この本は出会えて良かった。言葉の優しさを知る物語だった。2026/02/13
NAOAMI
10
建物と対話できる「家読み」のシガと出会ったクローンのナガノの二人。Ⅰ女性Ⅱ男性が周期的に入れ替わる人びとの暮らす街の公務員だったサバと天邪鬼なシールの二人。人々に体を削られ冬場の栄養素を提供するキンと、当たり前のようにそれを搾取できないリョクの二人(?)。性差も人間同士もなくジェンダーもへったくれも論じることすら馬鹿らしくなるような世界。ルールに縛られない世界での恋愛はとてつもなくピュアな気がする。真っ直ぐで自由。クローンという生き方・考え方の制約に悩まされながらシガを求めるナガノの内面が痛くも愛おしい。2026/03/16
パダワン
7
友人からのプレゼント本。 建物と会話のできる能力があるシガと、クローンの助手ナガノの物語、などの、SF短編小説集。 美しいことばが紡ぐ美しい物語。 恋愛の相手が異性でなくても、さらには人間でなくても自然、という恋愛観が、所謂マルチバース的な趣味の対象というより、規定された社会性を超える自由さのように感じた。 強者が搾取し、弱者は幸せに生きていくのが難しい世界。その中にあっても生き物は、例えば恋愛の成就のような、黒スープ(コーヒー)に象徴されるささやかな豊かさのような、生の喜びを希求するのだ。2026/05/11




