内容説明
長く生きれば避けられない老い。古来、老化とともに発症する病や認知症(老耄〈ろうもう〉)がいかに認識され、それを患う人びとがどのような眼差しのもとで介護され生活してきたのか。続日本紀・源氏物語・徒然草・官刻孝義録などの老人や老病に関わる記述から通史的に描き実態に迫る。高齢化社会を迎えた今日の現状にも触れ、課題解明の指針を示す注目作。
目次
老いを見る眼と認知症介護の今昔―プロローグ
嫌われる老いと讃えられる老い
嫌われた老人の生理
長寿を祝う心と老苦を恐れる心
蔑まれた老醜と讃えられた老いの知
老人を支える養生法と医療
学者たちの説く老人論と医療
老いをいかに迎えるか
老人の健康を支える技と知識
近世における老耄介抱の実践
伝統的な看取りの作法
老いと病と死
近世における看取り
近現代の老人―「老耄狂」から高齢者福祉へ―
西洋医学の導入と囲い込まれる精神障害者
近現代の老人介護の担い手―「淳風美俗」の家庭内介護
戦後の老人福祉制度の展開―エピローグ
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
jenny
6
平安時代も江戸時代も今も昔も老い、認知症には悩まされてきたのか…今もあるあるやんと頷いてしまう。小野小町もぽっくり逝きたいとな。 老いの苦しみやみじめさを知らないものだけが長寿を祝っている、ってのが深いわ。いつか自分も行く道である。2025/10/25
於千代
2
老いとそれに伴う介護について、古代から近代までの史料をもとに、日本人がどのように捉えてきたのかを探る一冊。 一言で言えば、老いに対する見方は現代よりもずっとネガティブだったようだ。 あとがきでは、著者自身の介護経験が綴られている。認知症の父親を在宅で介護していた際、警察から「なぜ精神病院に入れないのか」と叱責され、父親に末期の大腸がんが見つかったとき、「介護に終わりが見えた」とホッとした、そんな生々しい記述が印象的だった。2025/11/05
お抹茶
1
近世の書物を中心に当時の老いや介護の捉え方を記す。現代とそう変わらないように思う。『近世畸人伝』『続近世畸人伝』では,老病・衰老・老耄は医療の及ぶところではなく「天命と感じて服薬をやめ」,老人は人前から遠ざかるのがよいとされる。俳人・横井也有も,機能麻痺や喪失に直面しても悩まず,ずぼらに生き,人の手を借りて生きよと説く。『官刻孝義録』『続官刻孝義録』には老耄の類例や介抱の手本が多く書かれる。2025/12/13
渡辺 にゃん太郎
1
介護の歴史は精神保健福祉と比べると、劇的なことがなく、ただただ老いていく様子を静観しているようで面白みに欠ける。だからこそ、自立支援を基にしている介護保険制度には頑張ってほしいと思うが、制度設計を上回る超高齢社会で崩壊傾向にある。国も介護予防に踏み切った様子で、介護度の高い人の在宅生活は見捨てられているようにも見える。今後はお金のない要介護者はみんな施設行きかと予想するが、今も昔も長寿であることは程々がいいのであれば、安楽〇も認めた方がいいように感じるし、とにかく子どもが増えるような政策をしてほしい。2025/10/13
takao
0
ふむ2025/12/06




