内容説明
韓国社会の〝恨〟を描くゴシックスリラー
物語の舞台は、1950年代後半、朝鮮戦争の傷跡が生々しく残る、朝鮮初の西洋式「大仏ホテル」。朝鮮半島に外国人が押し寄せた時代に仁川に建てられた実在のホテルである。
アメリカ軍の無差別爆撃で家族を亡くしたチ・ヨンヒョンは仁川の港で泊まり客を大仏ホテルに案内する仕事をしていた。雇い主は同い歳のコ・ヨンジュだ。ヨンジュは苦労して英語を習得し、大仏ホテルの後身である中華楼での通訳を経て、再オープンした大仏ホテルの管理を任される一方で、アメリカ行きを虎視眈々と狙う。中華楼の料理人のルェ・イハンは、韓国人からヘイトの対象とされる華僑の一族のひとり。かつて栄華を誇った大仏ホテルも、今や中華楼三階の客室三室とホールだけの営業となった。悪霊に取り憑かれていると噂される大仏ホテルに、ある日、シャーリイ・ジャクスンがチェックイン。エミリー・ブロンテも姿を現し、運命の歯車が回りだす。
伝播する憎しみ、恨み、運命を変えたい人々、叶えたい想い……。スリリングな展開と繊細な心理描写によって、韓国社会の通奏底音である「恨(ハン)」を描ききり、最後は大きな感動に包まれる、著者の新境地。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
59
作者の短編集は余りに濃厚な悪意に耐え切れずに挫折してしまった。こちらは構えて読みましたが、杞憂となりました。大好きなゴシック・スリラーの形を取りながら「恨」に寄り添いつつ、その闇から抜け出す魂の救済が描かれる。二部の中心人物、ヨンヒョンが抱える「恨」。それは父への憎しみや自身への恥を責める声にしがみつく事で努力し、生きていたかつての私と重なった。だが同時に自分の執心と歪さに気持ち悪さも覚えていたのも確かで。ただ、蜜柑茶を飲むという日常が続けたかっただけなのに。だからこそ、語り手にジョンがいて本当に良かった2024/02/01
吉田あや
52
1887年、仁川に韓国初の西洋式ホテルとして実在していた「大仏ホテル」を舞台に描かれる「恨」と「愛」。物語は宿泊業としての経営が傾き、中華料理店「中華楼」として第二期を迎えていた1950年代後半、3階のスペースで住み込みのフロント係をしながらアメリカ行きを望むヨンジュ、朝鮮戦争で家族を失ったヨンヒョン、華僑としての出自に韓国人として受け入れてもらえずヘイトの対象になりながら中華楼を管理していたルェ・イハン、幽霊小説を書くためにホテルに宿泊してくるシャーリイ・ジャクスンを中心に展開されていく。(⇒)2025/01/02
あたびー
42
仁川に実在した(現在は復元され博物館)日本人創建のホテルを舞台に、スランプ中の作家が友人(後に恋人)の祖母や母、関係者から聞き取る話。最も長い友人の祖母の話は、亡くなった最初の夫からの聞き覚えだが、語られる度に姿を変えるらしい。もちろんその他の人からの話とも大きく異なる。朝鮮戦争時の悲惨な事件、アイデンティティの詐称、故郷とは何処か、などの要素が頻繁に現れる。幽霊のことは友人の祖母の話に含まれているが、物語全体に漂う象徴的イメージでもある。2024/03/04
星落秋風五丈原
23
著書タイトルは一緒だし、メタフィクションのように読みました。シャーリー・ジャクソンは家に対する恐怖を描く作家。2023/12/21
すーぱーじゅげむ
19
感動して相手の手を強く握りしめているつもりだったのに、手がいつのまにか首に変わっていて、相手を殺しかけてしまうシーンが怖かったです。どうしても抱いてしまった悪感情がタイミング悪く増幅されてゆく2部が面白いけれど、いろんな出来事を愛の物語に読み変えてゆく3部もいいです。2025/04/18
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