内容説明
【昭和・光と影】
夥しい人命が失われ、数えることの出来ぬ富が空しくなり、名誉と独立とを奪われ、ただ世界に向って罪だけを負うことによって、今、戦争が終るのである――昭和十七年一月、ビルマ派遣軍司令部宣伝班として従軍。帰国後、読売新聞社論説委員として敗戦の日を迎える。戦後を代表する社会学者の回想録。
〈解説〉粕谷一希
(目次から)
昭和十六年――昭和二十一年
徴用と三木清
ビルマの高見順
ラングーンの日々
日本への旅
新聞社の内部で
敗戦の日
スターリンの夢
明治四十年――昭和十六年
微禄の涯
偽善の勧め
地震のあとさき
社会学へ向って
習作時代
東大のうちそと
悲しい処女作
〈解説〉粕谷一希
感想・レビュー
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斉藤達也
1
インテリの矜持と韜晦を、ユーモアを交えて語る、昭和の頃には一般的だったが、近頃はめっきり見かけなくなった文章を懐かしく味わった。しかし、同時に東大のインテリの限界が露呈されていると。第一に氏は海外の社会学者の文献を紹介批評するだけで、自分の社会学を語ろうとはしない。第二にコントに倣って科学や実証主義を重視し、形而上学を排斥するが、形而上学の裏付けのない科学など神や仏という言葉を使わなければ、どんなデタラメでも主張して良いということになってしまう。このような学者が科学の、日本国の混迷を齎したと断言できる。2025/06/10