内容説明
古代末期から中世にかけて,ヨーロッパでは,石やガラスのかけらを使ったモザイクが床や壁に作られた.ローマ帝国の版図を実感させる絵から,聖堂を訪れ救済を求める人々を見守ったイエス像まで,「永遠の絵」は今も私たちの心を捉えて離すことはない.本書では,多数のカラー図版とともに,宗教と歴史が交差する美の宇宙に迫る.
目次
はじめに──泥まみれのモザイクから話は始まる
1 モザイクを見る
2 永遠の美術──モザイクとは何か
3 歴史をたずねて──古代からキリスト教へ
4 宗教、歴史、美術が交差するところ──ラヴェンナに行こう
5 モザイクをつくる
6 モザイクを壊す
7 聖母マリアの哀しみ
8 近代美術とモザイク
読書案内
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ねこ
83
モザイクは光の芸術である。しかも反射光の芸術であり見る角度によって、見る時間によって変わる上、絵画と違い動かせないので本物は現地に見に行くしかない。私は一度スペインはグラナダのアルハンブラ宮殿に行った時、拝見しました。7〜800年過ぎてもこの色彩!現代との価値観の違いに驚愕でした。本書紹介のモザイクは更に古い1400年前の地中海中心の宗教系モザイク写真が百点超掲載。聖書の深い理解があると更に心揺さぶられる絶品揃い。最後の見開きのサン・ヴィターレ聖堂の写真は圧巻!著者のモザイク愛が溢れています。2025/09/05
rico
66
美しい図版を行きつ戻りつ眺めながら読んでたら、時間がかかってしまいました。でも何でしょう、この満足感。モザイクと言えばタイル装飾レベルの認識しかなかった。この美しさといったら。テッセラというさまざまな素材の小片をモルタルにのせて描かれた図像の数々。絵画というよりは装飾、無機質な感じですが、それ故に信仰の対象としての揺るぎない存在感があって。精緻な職人たちの技は、後世の点描を思わせる光と色のハーモニーを感じます。失われにくく、ゆるぎないもの。いつか現地に行ってあの空間に身をおき、間近でじっくり見てみたいな。2025/09/18
ジュンジュン
13
実を言うと、ルネサンス以降の生き写しのような作品にばかり目がいって、のっぺりした中世美術に魅力を感じていなかった。だが、絵筆でカンヴァスに自在に描ける絵画と石やガラスを埋め込んで作るモザイク画を同列に見るのがそもそも間違い。今回、改めてモザイク画の超絶技巧を知ると、イエスやマリアの漫画チックな表情の凄さに漸く気づいた。じっくり見たいなあ、大塚国際美術館にあっただろうか?2025/09/10
ポルターガイスト
3
平易でページ数も少ないのに味わい深く,つい書物の世界に入りこめるような本だった。新書はこんな風であって欲しい。モザイクといえば砕いたタイルを敷き詰めて絵にする手法くらいしかイメージがなかったけれど,地中海世界のあちこちから素材を持ち込む点でローマ帝国の交易網を象徴する存在であり,ラヴェンナ,パレルモ,キエフ,ムツヘタ,そしてクリムトなどにもモザイクの影響が見られることは(つい見落としがちな)ビザンツの存在の大きさを物語っている。以上のような歴史的観点だけでなく美的な観点からも含蓄があり良書だった。2025/10/12
お抹茶
3
モザイク画のカラー写真が豊富。モザイク職人は不可視の神を星々煌めく蒼空の中の十字架として描き,モザイクを見ることは見えない神を見ることであった。中世のキリスト教美術にとって青と金は神の世界の色だった。ビザンティンの正面性や平面性が神の威厳にふさわしいと思われるようになり,カトリック教会にも正教イコンのキリストや聖母子像が飾られている。クリムトの絵の,ふんだんに用いた金,顔の三次元性と身体の二次元性の同居,背景の抽象的な修飾性,金と淡い緑の並置はモザイクと似ている。2025/09/06
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