内容説明
宝暦八年、獄門を申し渡された講釈師・馬場文耕。長屋暮らしの文耕は、かつてなぜ刀を捨て、そして獄門に処されることになったのか? 謎に包まれた実在の人物、文耕の生涯を端正な文章と魅力的な登場人物で描き出す。沢木耕太郎、初にして堂々たる時代小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
164
沢木 耕太郎は、永年に渡って新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者初の歴史小説、最期は獄門となった講釈師、馬場文耕の半生記、資料が少ないなか、見事に3D化しています。歴史エンタメとして充分楽しめました。 https://dot.asahi.com/articles/-/257219?page=12025/07/23
パトラッシュ
138
ノンフィクションの旗手が時代小説とは本を開くのが怖かったが、読んでみれば見事なエンタメとして成立している。馬場文耕の名は郡上一揆絡みで弾圧された講釈師とだけ聞いていたが、元武士である彼を田沼意次の若き日の旧友とする膝を打つ設定で社会の大きな渦に巻き込むドラマを成立させた。現代風に言えば日銭稼ぎのためデタラメ話を喋りまくっていたユーチューバーが、社会の矛盾に目覚めて権力を笠に着た連中を告発する物語か。意次や将軍家重をはじめ周囲の庶民までいい人ばかりなのは疑問だが、思いがけないラスト後の読後感は実に良かった。2025/07/19
どぶねずみ
24
講釈師、馬場文耕について。講釈を聴くというのは江戸時代の娯楽の一つ、今で言うと映画や寄せを見に行くような感覚なのか? 町民にとっては講釈師がやってくるのをとても楽しみにしていたようだ。話のネタは色々だが、特に風刺した話がウケたようで、それは今も変わらないと感じた。人気の講釈師の話も将軍をネタにした話はウケが良く、それを将軍様ご自身が聴くときにはどうなることやハラハラした。講釈も風刺があまりに強いと命取りになる。これが沢木さん初の時代小説とは思えないほど楽しませてもらった。2024/08/31
信兵衛
21
昔の軍記物「太平記」等々をただ講釈して糊口を凌いでいた文耕が、偶々のきっかけとはいえ、観客たちの関心を惹きつけていく講釈へと大きく変貌していくところが読み処です。お薦め!2025/07/29
ばんだねいっぺい
18
敵目線の、馬場さんは、肚の読めぬ、それでいてインフルエンサーだったから、憎悪もあれば、断ち切るためにもということなのだろう。芸としての筆禍舌禍の毒についても考えさせられるし、国家とジャーナリストの関係についても考えさせられる。次の大河は、馬場文耕で。2025/08/23
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