岩波新書<br> グローバル格差を生きる人びと - 「国際協力」のディストピア

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岩波新書
グローバル格差を生きる人びと - 「国際協力」のディストピア

  • 著者名:友松夕香【著】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2025/06発売)
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  • ISBN:9784004320708

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内容説明

「善意」の国際協力は限界を迎えている.アフリカの人びとはSNSや衛星放送で日々目にする豊かな国の暮らしを羨望し,先進国との関係に疑念を抱くようになった.「支援」によって困窮する農村や女性,国際詐欺や陰謀論……長年のフィールド研究の成果をもとに,人びとの目線で「国際協力」の神話を解体し,新たな共存の道を探る.

目次

はじめに
序章 グローバル格差の感情
1 「白人の国」への羨望
なぜこんなにも苦しいのか
夢は「白人の国」で暮らすこと
2 理解し合わないままの共存
なぜ白人はこんなひどいことをするのか
スマートフォンで知る「不条理」な現実
3 不均衡なグローバリゼーション
国際協力の力学
本書の構成
第1章 請い、与えられる者の日常
1 不足のなか「自立」する術
2 若者の大量失業化
出稼ぎに行きたくない
学歴に見合う仕事がない
稼ぎがない友人を助ける
3 薄利の農村ビジネス
4 公務員になりたい
第2章 農村の国際詐欺師たち
1 名声と消費のエンターテイメント
若い詐欺師の祝宴
ご祝儀散財のショータイム
2 デジタル世代による識字の活用
オンライン詐欺の台頭
若い詐欺師たちのビジネスネットワーク
3 好まれるアメリカ人とドル
アメリカの情報弱者と情報通の詐欺師たち
同情できない遠く離れた人間
4 格差が育む拝金主義
白人のカネと「ミリオンダラー」
高校教師の憂い
5 「正しくなさ」が薄まるとき
第3章 ゴリアテに立ち向かうダビデ
1 反白人感情
2 「新植民地主義」に対する愛国主義運動
経済成長から内戦へ
ゴリアテに立ち向かうダビデ
3 武装勢力と資源をめぐる西側諸国の「陰謀」
なぜ自分たちの国は混迷しているのか
フランス軍と国連平和維持軍の追放
4 別格の「白人」としてのロシア
第4章 陰謀論に共感する
1 メディアの民主化
欧米メディアへの不信
メディアの信頼性とはなにか
2 フランスの金融帝国主義
植民地通貨「CFAフラン」の継続
「保護者」としての正当化
新たな共通通貨誕生の頓挫
3 ディアスポラ活動家による代弁
アフリカ連合の誤算
解任事件の影響
アフリカ諸国の政治家と西側諸国の寄生関係
4 好感を勝ち取った中国とロシア
踏み台にされた西側諸国
開発援助に対する内部批判
第5章 「俺たちは腹が減っている」
1 食料危機のグローバルメカニズム
バイオ燃料拡大と穀物価格の高騰
世界金融危機と穀物価格の高騰
2 貿易の自由化による食文化の変容
小麦と米の輸入の増加
グローバルな生産性競争
3 一次産品輸出による自立の夢想
カカオの供給過多と価格暴落
政府とグローバル企業の攻防
4 政治家たちの憂い
人口ボーナスの危機
自動化(オートメーション)時代の到来
第6章 自分たちの農法を忘れた人びと
1 失われた技術
持続可能で緻密化された園芸の技術
緑の革命による在来農法の瓦解
2 農業の陳腐化
価値を失った近代農業
緑の革命による「農業の粗放化」
緑の革命がもたらした「お金の懇願」
3 二一世紀の「新たな」緑の革命
ロックフェラー財団による応答
化学肥料で再び実るトウモロコシ
4 援助による格差の拡大
エリートの大規模農家の台頭
「農家」の二極化
第7章 過重労働をこなす女性たち
1 農村女性の過重労働
女性の役割
耕作を始めた女性たち
2 ジェンダー政策の誤想
労働力としての女性の価値
「女性の周縁化」の仮説
「身勝手な男性」像の形成
エンパワーメント手法の台頭
3 開発援助のディストピア
4 農業を美化した帰結
終章 国際協力の再構築
1 知識生産の視点の転換
(1)教育を受けても食べていけない
(2)識字教育を国際詐欺に活用する
(3)資源外交と軍事介入への不信
(4)欧米メディアや国際協力への不信
(5)食料・経済危機のしくみ
(6)援助による技術の喪失と格差拡大
(7)女性支援による農業の女性化
2 グローバリゼーションの不均衡を軽減させる
植民地型経済からの脱却に向けて
困難な状況に置かれた人びとの生活保障
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

74
著者はブルキナファソと隣接するガーナ北部をフィールドとする研究者。現地での見聞やインタビュー、さらにネットから得られる様々な情報を駆使して、現在の西アフリカを主としたアフリカの現状をレビューしている。その中で印象的なのは、デジタル技術の向上で高まってきた欧米先進国への不信感。一方で英語圏のガーナの若者は、アメリカ人に対しロマンス詐欺を仕掛けて稼いでいる現実。その他中国やロシアが現地で支持を高めている理由や、「緑の革命」の顛末と続く21世紀の「緑の革命」がもたらしたものなど、新しく考えるべきことが語られる。2025/07/14

ケイティ

28
国際協力がどれほど機能しているのか、ぼんやりと懸念していたことが具体的かつ明確な現実として突きつけられた。1977年生まれの著者は、経済人類学などを専門とする研究者で現在は大学教授。JICA協力隊活動をはじめ20年以上西アフリカを行き来しながら、グローバル格差の進行に危機感を抱いてきたという。この問題は「国内事情の不具合によるものでなく、グローバルな力学によってもたらされたこと、援助する富裕国側の価値観にもとづく知識生産と実践を通して、現地に大きな矛盾をもたらしてきたこと」を強調している。2025/08/04

kan

25
勤務校新着本。表面だけをなぞる国際関係本とは一線を画す良書。国際協力に関心のある高校生に薦めたい。ナイジェリア詐欺やガーナ詐欺という不名誉な呼び名が定着して久しいが、失業率の高さとスマホの普及の帰結という単純な話ではなさそうだ。構造的な格差が可視化され、反白人・反西欧感情の高まりが源流にあることは重要な視点だ。また、持続可能でない緑の革命の結果、土壌劣化や伝統的農法の衰退と消滅に繋がり、先進国側の搾取的戦略に思えて苦しい。戦争だけではなく食糧確保も、不公平で倫理に反している方が儲かるのはつらいことだ。2025/08/09

shikada

14
アフリカでの「グローバル格差」をテーマにした1冊。著者はガーナを中心としたフィールドワークをもとに、当事者たちのリアルな姿から問題を見つけている。援助により地場産業が衰退し、教育が進んでもまともな雇用がなく、識字やデジタルスキルはおもに国際ロマンス詐欺に用いられてしまう。女性への農業援助は、家事労働の負担がただでさえ大きい女性たちの負担をさらに増やし、周縁化した。移民政策などから、西側諸国への不信感も根強い。良かれと思ってなされた「国際協力」が長期で見ると歪みを生んでいることが少なくない。2025/08/14

sk

5
現代西アフリカ事情2025/07/18

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